研究課題/領域番号 |
23249030
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
村田 満 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50174305)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 血栓症 / 抗血小板薬 / 抗凝固薬 / モニタリング |
研究概要 |
抗血栓薬は巨大市場であり、その適正な使用は国民に大きな恩恵をもたらす一方、無益な使用が医療経済に与える影響は甚大である。抗血栓薬の効果には個体差が大きく、安全、効率的な治療にはモニター検査が重要である。しかるにこれまで使用されてきた検査、例えば血小板機能検査については、手技の複雑さ等から理想的なモニター検査とは程遠い。 本研究において昨年度は5年計画の3年目として、近年保険収載され急速に普及しつつある抗凝固薬のうち特に抗トロンビン薬と抗Xa薬に着目し、有用なモニター法を探索する為の検討を行った。具体的にはトロンビン時間法(Clauss法)を応用したダビガトランの出血リスク管理を行うため、トロンビン力価の異なるFbg測定試薬間での測定値の違いに着目し、アルガトロバンやダビガトランのモニタリングの為の新たな検査方法を検討した。またリバーロキサバンおよびアピキサバンの添加血漿を用いて、凝固検査のモニタリングへの応用の可能性について検討を行った。また新規血栓形成能解析システム(T-TAS)について、メタボリック症候群における血栓形成能を解析するためT-TASおよび血小板凝集能測定を行った。メタボリック症候群におけるT-TAS測定値は、凝固系も含めた全血の血栓形成能亢進状態と関連し、虚血性疾患発症予防のためのモニタリングとして有用である可能性が示唆された。さらに抗血小板薬が及ぼす血小板内代謝変化を網羅的に捉えるため、in vitro培養系での巨核球-血小板産生過程におけるアスピリンの効果を検討した。脂肪前駆細胞は骨髄細胞に比し増殖能が優れ、血小板機能も高い傾向にあることから、血小板産生における抗血小板薬が与える影響を遺伝子発現網羅的解析にて施行する際に有用な細胞と考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
共同研究者との連携の都合などにより検体収集が遅れている。しかしながら新規抗凝固薬のモニター法と新規血小板機能測定法については具体的な研究成果が得られている。メタボリック症候群における血栓形成能などへの展開も見られた。抗血小板薬が及ぼす血小板内代謝変化に対する網羅的探索についての研究も進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、分子標的が明確な抗血栓薬が主流となれば薬剤に応じた精度の高いモニター検査が求められる。本研究では従来型の血小板機能検査や凝固検査から脱却し、治療薬に特異的な新しい臨床検査指標を検討している。当初から予定している通り、各種疾患で抗血小板薬、抗凝固薬服用中の患者の検体収集を進める。同時にin vitro細胞系での網羅的解析を行う。作用点が既知の抗血栓薬については標的分子の下流にある因子の変化に着目し臨床検査として実用的なものの絞り込みを行ってゆく。
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