研究課題
今年度は、コホート調査および結果報告を6カ所(山形県上山市、福岡県福岡市、鹿児島県霧島市2カ所、埼玉県本庄市2カ所)で実施した。いずれの事業所も作業環境管理、作業管理、健康管理が徹底・深化し、過去曝露者、継続曝露者、新規曝露開始者のいずれも、曝露指標、健康影響指標の改善が見られた。新規事業場については、事前説明及び調査を10カ所(三重県松坂市、兵庫県加古川市、兵庫県三田市、愛知県春日井市、静岡県駿東郡、静岡県裾野市、東京都足立区、埼玉県草加市、千葉県野田市、栃木県真岡市)で実施した。その調査結果については、4月12日に全社を対象とした結果報告会を実施し、16日、18日には調査結果が悪く指導が必要な2事業場については当該事業場にて会社および個人指導を実施した。作業環境測定・個人曝露濃度測定は、研究協力者の田中茂教授(十文字学園女子大)により1カ所(鹿児島県霧島市)で実施した。この事業所はインジウム毒性情報が届いておらず、呼吸保護具の無い状態で作業を継続していたため、今まで情報が無かった曝露濃度と血清中インジウム濃度の関係を明らかにすることができた。5月に名古屋市で開催された日本産業衛生学会総会時には、インジウムに関する情報交換会を実施し、インジウム取扱事業者から約50名、研究者約20名、厚生労働省行政官1名が出席し、最新の研究成果、事業場の環境改善報告、行政の動向等について情報交換を実施した。
2: おおむね順調に進展している
世界で最大のインジウム曝露コホートの追跡研究は、各事業場および曝露作業者との良好な協力関係により、順調に推移しており、その成果は「研究実績の概要」に記載したとおりである。呼吸器以外の臓器に関する健康影響についても測定を実施し、現在までの結果では、呼吸器以外の影響はないことを確認した。平成22年12月にはインジウム・スズ酸化物等の取扱い作業による健康障害防止に関する技術指針が出されて努力義務が課され、平成25年1月1日からは労働安全衛生法が改正され、インジウム化合物が特定化学物質第2類物質としての労働衛生管理が義務づけられることとなった。しかしこの法改正では「金属インジウム」が除外されているが、その理由は「金属インジウム」の呼吸器障害に関する情報が無いことであった。今年度は「金属インジウム」取扱い10工場で新規に疫学調査を実施することができ、呼吸器障害情報の欠落部分を埋めるための見通しがたった。
本研究については、今までと異なる方向の研究を実施する予定はない。一方、平成25年1月1日から労働安全衛生法が改正され、インジウム化合物が特定化学物質第2類物質としての労働衛生管理が義務づけられることとなったことにより、法定測定健康診断項目の継続測定は容易になったが、それ以外の健康診断項目については協力各社との話し合いが必要になってきている。我々は、日本で最初に2台の可搬型肺胞ガス拡散能測定器を導入して興味深い結果を得つつあり、数年に一度のHRTC撮影により一旦不可逆的な肺障害を起こした労働者では、肺の気腫化が進行する可能性を見いだしている。このような法定項目にはない検査を実施することについて、事業場・労働者の本研究協力に対する対応が今までと変わってくる可能性があることに留意しながら研究を進める必要が出てきている。
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