研究課題/領域番号 |
23249034
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
島 正之 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (40226197)
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研究分担者 |
谷澤 隆邦 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10126534)
小森 慎二 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (60195865)
澤井 英明 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (80215904)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 環境 / 大気汚染 / オゾン / 気道炎症 / アレルギー / 妊娠 / コーホート研究 |
研究概要 |
本研究は、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」により兵庫県尼崎市で実施されている出生コーホート研究を基盤として、妊娠中の大気汚染物質への曝露が妊娠の異常、胎児の成長や発達に及ぼす影響を解明することを目的とする。 気道の炎症状態を非侵襲的に評価するため、呼気中の一酸化窒素(FeNO)濃度と呼気凝縮液(EBC)について検討した。若年女性40名を対象に、質問票を用いて呼吸器症状を評価した後、一定の流速で呼出した呼気をアルミニウム製のバッグに採集し、FeNO濃度を測定した。また、R-tubeを用いて10分間の口呼吸で採集してEBCを採取して、アルゴンで脱気させた後にpHを測定し、ELISA法を用いて酸化ストレスマーカーである8-isoprostaneを測定した。FeNO濃度、EBC中8-isoprostaneおよびpHの平均と標準偏差は、49.0±23.4ppb、1.1±0.7pg/ml、7.5±0.6であった。呼気NO濃度は、喘鳴症状、鼻症状のある人、肺炎の既往がある人で有意に高かった。 次に、若年女性21名を対象に、FeNO、EBCpH、肺機能検査を繰り返して実施し、大気汚染物質濃度の変動との関連を評価した。検査前のオゾン(O3)及び浮遊粒子状物質(SPM)濃度が増加すると、EBC pHの有意な低下が観察された。鼻炎の既往があるものは、オゾン及びSPM濃度の増加によるEBC pHの低下が顕著であった。1秒量(FEV1)も検査前のSPM濃度の増加によって有意に低下した。FeNOは、喘息の既往のあるものにおいてのみO3及びSPM濃度が増加すると有意に増加した。 本研究より、FeNO濃度は喘鳴や肺炎などがある者では高値であることが確認できた。EBC中の8-isoprostane値はせきやたん症状、pHは息切れとの関連が示され、大気汚染物質への曝露の影響を受けることが明らかとなった。FeNO濃度、EBC中8-isoprostaneおよびpHは気道炎症を非侵襲的に評価できるマーカーとしての可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」は兵庫県尼崎市で実施されており、本研究は同調査の参加者を対象に追加調査として実施するものである。大気汚染の曝露評価方法を確立するために予想以上の時間を要したため、当初の予定よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
大気汚染物質への曝露評価や健康影響評価についての基礎的な検討を行って得られた成果を踏まえて、本格的な調査を開始しており、今後も継続する。調査への同意者数も順調に伸びており、平成24年度末までに3,539名の同意を得て、2,399名が出生している。また、調査方法は確立することができたため、今後は妊娠中の大気汚染への曝露と妊婦の気道炎症及びアレルギーの病態との関連について検討し、さらに大気汚染と妊娠の異常、胎児の成長や発達に及ぼす影響についても検討し、大気汚染をはじめとする環境因子が胎児・出生児に与える複合的な影響を明らかにする。
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