研究実績の概要 |
本研究は、環境省による「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」として兵庫県尼崎市で実施されている出生コーホート調査を基盤として、妊娠中の大気汚染への曝露が妊娠の異常、妊婦の健康状態、胎児の成長や発達に及ぼす影響を解明することを目的とした。平成26年度は、対象者の妊娠中の大気汚染物質への曝露評価と妊婦のアレルギーの病態についての検討を行った。 インフォームド・コンセントの得られた妊婦は5,189名であるが、既に対象地域から転出した者がいるため、4,766名について曝露評価を行った。地域内には幹線道路、工場等の大気汚染物質の発生源が存在するため、これらをメッシュ単位で推計するモデルを構築し、対象者の居住地における窒素酸化物濃度の年平均値を推計したところ、平均±標準偏差は27.5±3.8ppbであった。主要幹線道路から居住地までの距離別に見ると、50m未満に居住する者(554名)は31.8±5.2ppb、50m以上に居住する者は26.9±3.2ppbであり、50m未満に居住する者の濃度が有意に高いことが明らかとなった。 対象者の妊娠前期に採取された血清を用いて、炎症反応の指標である高感度C反応タンパク(hs-CRP)と、アトピー性皮膚炎の指標であるthymus and activation-regulated chemokine (TARC)の測定を実施した。検査を実施できたのは810名であり、hs-CRPの幾何平均値は1278 (95%信頼区間:1184-1381) ng/mL、TARCの幾何平均値は140.3 (95%信頼区間: 138.3-142.6) pg/mLであった。これらの値と居住地の幹線道路からの距離及び窒素酸化物推計濃度との関連は認められなかった。
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