研究概要 |
本研究では、過剰に摂取される栄養による全身の影響、とくに、過栄養によって肝臓の機能が大きく障害されていることを、遺伝子・タンパク・脂質の系統的な解析から明らかにし、その病態を研究している。とりわけインスリン抵抗性を代表とする動脈硬化やがん化との関連を解析している。我々が明らかにした肝臓から産生される新規のタンパク(ヘパトカイン)であるセレノプロテインPの研究をすすめ(Cell Metabolism)、糖尿病の病態を悪化させる機序を解析している。セレノプロテインPの発現はメトフォルミン投与によって減弱した。この結果は、メトフォルミンの新しい作用機序を示すとともに、セレノプロテインPを標的とする治療法のひとつがメトフォルミン投与であることを示すものであった(J Biol Chem 289:335-45, 2014)。また、新規のヘパトカインとしてleukocyte cell-derived chemotaxin 2 (LECT2)を同定した。LECT2は肥満と筋肉におけるインスリン抵抗性と相関し、飢餓センサーであるAMPKと拮抗して発現しており、満腹センサーとして働いていることが考えられた。LECT2欠損マウスはインスリン感受性が亢進し、LECT2の投与はJNKのリン酸化によりインスリンシグナルを障害していた(Diabetes Jan 29. 2014 [Epub ahead of print])。脂肪肝が及ぼすインスリン抵抗性と、脂肪組織および筋肉の脂肪が及ぼすインスリン抵抗性との関連は不明であった。69例のヒトにおける臓器のインスリン抵抗性を解析したところ、脂肪組織および筋肉の脂肪化ではなく、肝臓の脂肪化が肝臓のインスリン抵抗性のみならず筋肉のインスリン抵抗性と相関していた(PLos One 9(3): e92170, 2014)。
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