研究課題
プロテオーム解析法を用いて難治性消化器疾患と関連する蛋白を同定し、臨床的意義や病態との関連を明らかにし、診断法や治療法の臨床応用を目指している。25年度は、アポトーシス抑制因子(AIM)、補体C4断片、ヒト好中球ペプチド(HNP-1)を中心に解析を進めた。肝生検を施行した慢性肝疾患と血清AIMとの関連を検討すると、血清AIM値は肝疾患の原因には依存しない肝線維化との関連があると考えられた。一方、自己免疫性肝疾患とは異なり、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)においては、AIMはIgMや抗核抗体と関連した。肥満などのメタボリック症候群の病態において、AIMは免疫的機序を介したNAFLDの病態形成に関与する候補分子であり、AIMの制御がNAFLDの新しい治療法の創出に貢献できる可能性があると考えられた。また、HCV持続感染者血清中に増加している補体C4断片は、C型慢性肝炎患者の抗ウイルス効果と関連する可能性を見出した。一方、HNP-1トランスジェニックマウスにアルコール性肝障害を誘導すると、肝線維化と肝細胞アポトーシスが促進されたことから、HNP-1はアルコール性肝障害の増悪因子であることが示唆された。しかし、マウスの膵炎モデルでの解析では、HNP-1は膵炎の病態には関連しないと考えられた。さらに、血清AIMはクローン病で上昇し、潰瘍性大腸炎では上昇しないことを新規に見出した。以上のことから、本年度は、AIMは慢性肝疾患の肝線維化マーカーであるだけではなく、NAFLDの病態に深くかかわること、補体C4断片はC型慢性肝炎の抗ウイルス効果予測マーカー候補であること、HNP-1はNAFLDだけではなく、アルコール性肝障害の病態進展に寄与すること、AIMは炎症性腸疾患におけるクローン病と潰瘍性大腸炎の鑑別マーカー候補であること、を明らかにした。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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