研究課題
福山型筋ジストロフィー(FCMD)は、重度の筋ジストロフィーに脳奇形を伴う常染色体劣性遺伝性神経筋疾患であり、日本に多く、未だ治療法がない。殆どのFCMD患者は、フクチン遺伝子の3'非翻訳領域に約3kbのSVA型レトロトランスポゾンの挿入変異を持つ。この疾患の発症機序は、mRNAの不安定化や転写障害によるものと考えられていたが、詳細は不明であった。今回我々は、FCMDがSVAの挿入により誘導されるスプライシング異常症であることを証明した。この異常スプライシングは、SVA挿入配列内に存在する強力なスプライシング受容部位のexon-trapping機能により、最終エクソンのフクチンをコードする領域内の選択的スプライシング供与部位が活性化されて、引き起こされていた。そこで、異常ヌプライシングを阻止するアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)を用いたスプライシング制御治療法が有効と考え、異常スプライシング部位、エクソン内スプライシング促進配列、及びイントロン内スプライシング促進配列を標的とするAONを設計した。患者由来細胞に導入、及びFCMDモデルマウスに筋注ならびに全身投与した結果、患者由来細胞において正常のフクチンが回復し、またモデルマウスにおいて正常フクチンの回復、αジストログリカンの糖鎖修飾及びラミニン結合能の回復が確認された。さらにこのSVAのexon-trapping機能による異常スプライシングが、SVA挿入変異をもつ他疾患(高コレステロール血症、中性脂肪蓄積症)においても引き起こされていることを証明し、またチンパンジーにはないヒト特異的なSVAのexon-trapping由来の遺伝子産物を脳で同定した。以上より、SVAのexon-trapping機能はヒトの疾患や進化に関与しており、FCMDに対しては初の根治療法実現の可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初予定どおりの成果が得られているため。
有効なAONの至適化が重要出る。毒性が低く、効果の高い核酸配列を探求し標的配列の微調整を行う。2,3塩基をずらすだけで効果が劇的に上がる配列もあるため、標的配列(スプライシング受容部位、供与部位、スプライシングエンハンサー、サイレンサー等)を網羅的に検討する。
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