研究課題
研究期間の1年目として今年度は主にエピジェネティクス関連分子の異常によって発症する造血器腫瘍モデルマウスの構築を行なっている。1 miR125bによる白血病モデルマウス免疫グロブリンプロモーターを利用してmiR125bをB細胞において構成的に発現するトランスジェニックマウスを2系統樹立した。これらのマウスはB前駆細胞急性リンパ性白血病(BCP-ALL)を発症した。我々はmiR125bの新たな標的遺伝子としてTrp53inp1を同定した。この分子は細胞死を誘導する分子であるが、miR125bによってその発現が抑制され、細胞の腫瘍化につながったと考えられる。2 変異EZH2による造血器腫瘍ヒストンH3K27のメチル化酵素EZH2は多くの癌において過剰発現していることが知られていたが、最近、さまざまな骨髄系腫瘍において機能喪失型の変異が見いだされた。我々は機能喪失型EZH2のトランスジェニックマウスを作成している。現在、3系統のマウスを樹立してうち1系統で遺伝子がジャームラインに組み込まれたことを確認した。平行して行なっているマウス骨髄移植モデル(マウスBMTモデル)では、骨髄系細胞の異形成が強い骨髄異形成症候群(MDS)様の症状を呈している。3 変異ASXL1による造血器腫瘍さまざまな骨髄系腫瘍において認められるポリコーム様遺伝子ASXL1の3'欠失型を利用したトランスジェニックマウスを作成中である。またマウスBMTモデルでは変異型ASLX1はMDS/白血病を発症することが判明し、現在発症の分子メカニズムを調べている。
2: おおむね順調に進展している
トランスジェニックマウスもマウス骨髄移植モデルマウスも樹立まで半年から1年かかる実験である。現時点で解析すべきトランスジェニックマウス、骨髄移植モデルマウスも樹立の目処がたったので予定通り研究が進捗していると言える。
今年度は樹立できつつあるトランスジェニックマウスと骨髄移植モデルマウスを解析して造血器腫瘍発症の分子メカニズムを調べる。現時点では特に問題点や変更点はないが、造血器腫瘍発症の分子メカニズム解明は容易ではないことが予想される。その時には、網羅的DNAメチル化解析、染色体沈降法(ChIP)、ChIP-seqなど最近のエピジェネティクス解析法を駆使してさまざまな方向から実験を行なう。
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