研究概要 |
マウスモデルを利用した造血器腫瘍の研究を行い、既存の遺伝子変異に加え、最近新たに発見された種々の遺伝子による造血器腫瘍発症のメカニズムを解析した。 1) TET2、EZH2あるいはASXL1の変異体を導入した骨髄細胞を移植したマウスは骨髄異形成症候群(MDS)様疾患を発症し一部は白血病に移行した(Inoue et al. J Clin Invest, 2013および未発表データ)。ASXL1変異体はC末側を欠失しているが、その過剰発現は細胞株の好中球分化を抑制すること、活性型Ras変異体と協調して急性白血病を誘導することから従来から言われていたクラス2変異と定義できる。臨床的に患者細胞でASXL1変異と共存することが多い遺伝子変異との組合わせをマウスモデルで試したところ、一部の遺伝子変異との組合わせで急性白血病の発症が誘導されることが明らかとなった。 2) 我々は以前Hes1過剰発現が慢性骨髄性白血病(CML)の急性転化(CML-BC)に関与することを報告したが、今回Hes1がNFkB活性化を介してMMP9の発現を誘導しCMLの進展に寄与しうることを見いだした(Nakahara et al. Blood in press)。また、Hes1過剰発現は染色体転座によって形成されるFIP1L1-PDGFRA融合遺伝子と協調して急性白血病を誘導することをマウスモデルで示した(Uchida et al. Experimental hematol, in press)。好酸球性白血病5例中2例でHes1の過剰発現が認められた。Hes1はC/EBPaを抑制することによって好中球分化を抑制することが知られていたが、今回の結果と合わせてHes1過剰発現が白血病発症においてクラス2変異の働きをすることが示された。
|