研究概要 |
難治性急性骨髄性白血病(AML)の再発に関わる遺伝子変異を探索する目的で、初発時、再発時、および正常(寛解期) DNA検体の得られる種々の病型を含む成人再発AML 33例(t(8;21):10例, t(15;17):8例, FLT3-ITD: 10例, 正常核型ないしMLL-PTD: 5 例)について、全エクソン解析を行った。同定された変異候補についてはすべてサンガーシーケンスによる検証を行った。正常核型AMLを除く各病型で5-10個の非同義置換を伴う体細胞変異が同定された。一方、正常核型AMLでは25-35個の変異が同定された。t(8;21)転座陽性AML(N=10)の解析では計92個の非同義置換変異が同定された。うち47変異は初発・再発に共通する変異であったが、10変異は初発時のみ、35変異は再発時のみに認められる変異であった。KIT, TET2, TTN,および MGAの変異が繰り返し認められた。FLT3-ITD陽性AML(N=10)ではDNMT3A, WT1, RUNX1 and IDH1遺伝子を含む50個の遺伝子に計60個の非同義置換変異が同定され、うち38遺伝子は初発・再発で共通する遺伝子であった。急性前骨髄球性白血病(N=8)では, 61遺伝子に計63 mutations が同定された。MLL-PTD AML(N=5)では, 42 遺伝子に変異が認められ、うち、24 遺伝子が初発時と再発時で共通していた。 APL以外の症例では再発時クローンは初発時に認められた主要なクローンに由来していたが、APLの4例では初発時と再発時で全く異なるクローンに由来することが確認された。一方、再発ALLについては現時点で7例の解析が完了している。今後同定された変異をより多数のコホートが確認することによりこれらの臨床的、生物学的な意義を明らかにする。
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