研究課題/領域番号 |
23249058
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
秋山 真志 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60222551)
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研究分担者 |
小川 靖 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (10567754)
河野 通浩 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60319324)
阿部 理一郎 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60344511)
杉浦 一充 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70335032)
室 慶直 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80270990)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 魚鱗癬 / ABCA12 / フィラグリン / マウスモデル / 遺伝子治療 |
研究概要 |
(A) 先天性魚鱗癬様紅皮症(ABCA12機能の部分欠損変異を病因とする)を対象としたABCA12発現増強による治療戦略の開発:(1)正常、および、患者由来培養表皮細胞を用いたABCA12発現増強因子の解析:培養表皮細胞にたいして、PPAR agonistsやレチノイドなど、各種の表皮細胞分化促進効果のある薬剤、因子を添加し、正常ABCA12の発現増強効果を判定した。ABCA12の発現増強効果が認められた薬剤につき患者由来表皮培養細胞でもABCA12の発現増強効果を確認した。(2)再構成魚鱗癬皮膚病変にABCA12発現増加因子を投与し、ABCA12遺伝子および蛋白の発現をモニターした。 (B) 尋常性魚鱗癬(フィラグリン欠損を病因とする)を対象としたABCA12発現増強による治療法の開発:フィラグリン欠損尋常性魚鱗癬モデルマウスとヒトABCA12トランスジェニックマウスを交配することにより、フィラグリン欠損尋常性魚鱗癬マウスのトランスジェニックレスキューを行い、皮膚の表現型を評価し、ABCA12の強発現により、フィラグリン機能が代償され得ることを確認した。 (C) 道化師様魚鱗癬(ABCA12機能喪失変異を病因とする)を対象としたリードスルー療法の開発:(1)患者由来ヒトABCA12変異を有する道化師様魚鱗癬モデルマウスの作成:日本人において頻度高く認められる停止コドンを有するmutant ABCA12をクローニングし、それらの変異ABCA12を有するトランスジェニックマウスを作成した。(2)上記1で作成した患者変異を持つモデルマウスでのリードスルー治療実験: ABCA12変異に対するリードスルー活性が確認された各種のリードスルー候補薬剤を種々の濃度で投与し,ABCA12の発現を定量的にモニターした。これらの結果から、リードスルー治療に用いられる可能性のある薬剤を絞り込んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 先天性魚鱗癬様紅皮症(ABCA12機能の部分欠損変異を病因とする)を対象としたABCA12発現増強による治療戦略の開発については、正常ヒト、および、マウスの培養表皮細胞、および、患者由来表皮培養細胞を対象として、PPAR agonistsやレチノイドなど、各種の表皮細胞分化促進効果のある薬剤、因子によるABCA12の発現増強効果を確認するところまで来ている。また、再構成魚鱗癬皮膚病変においても、ABCA12発現増加因子によるABCA12遺伝子および蛋白の発現増強を認めている。 (2)日本人において頻度高く認められる停止コドンを有するmutant ABCA12をクローニングし、それらの変異ABCA12を有するトランスジェニックマウスを作成できている。さらに、作成した患者変異を持つモデルマウスでのリードスルー治療実験を施行しつつある。すなわち、ABCA12変異に対するリードスルー活性が確認された各種のリードスルー候補薬剤を種々の濃度で投与し,ABCA12の発現を定量的にモニターし、これらの結果から、リードスルー治療に用いられる可能性のある薬剤を絞り込みが進んでいる。 (3)飼育施設の不足により、北大からのマウスの移送が遅れた関係で、モデルマウスの交配、飼育には、若干の遅れを生じており、その結果として、フィラグリン欠損尋常性魚鱗癬モデルマウスとヒトABCA12トランスジェニックマウスを交配することにより作成するフィラグリン欠損尋常性魚鱗癬マウスのトランスジェニックレスキュー実験、並びに、患者由来ヒトABCA12変異を有する道化師様魚鱗癬モデルマウスに対する治療実験には、若干の遅れを生じている。
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今後の研究の推進方策 |
(A) ABCA12機能の部分欠損変異を有する先天性魚鱗癬様紅皮症を対象としたABCA12発現増強による治療戦略の開発:(1)日本人患者に認められたABCA12遺伝子変異を持つ、モデルマウスを作成する。モデルマウス由来表皮細胞を用いたABCA12発現増強因子の解析を行う。(2) ABCA12の発現増強効果が認められた薬剤につき、患者由来表皮培養細胞に対するABCA12発現増強因子による治療実験を施行する。さらに、再構成魚鱗癬病変にたいしても、ABCA12発現増加因子を投与し、ABCA12の発現増強効果を評価する。 (B)フィラグリン欠損を有する尋常性魚鱗癬を対象としたABCA12発現増強による治療法の開発:(1) flaky tailマウス個体に、ABCA12発現増強因子を投与し、皮膚表現型の改善を臨床的に評価する。また、皮膚のバリア機能の改善度を客観的に評価し、ABCA12発現増強薬剤の尋常性魚鱗癬に対する治療効果を確認する。(2) ABCA12発現増強によるアトピー性皮膚炎への応用の可能性を探る。具体的には、ABCA12発現増強因子を投与しつつ、flaky tailマウスに各種アレルゲン暴露を行うことにより、感作の成立を予防できることを確認する。 (C) ABCA12機能喪失変異を有する道化師様魚鱗癬を対象としたリードスルー療法の開発:(1) 患者由来ヒトABCA12変異を有する道化師様魚鱗癬モデルマウスの作成:日本人において頻度高く認められる停止コドンを有する患者由来変異ABCA12を有する、道化師様魚鱗癬モデルマウスを作成する。(2) 上記1で作成した患者変異を持つモデルマウスでのリードスルー治療実験: ABCA12変異に対するリードスルー活性が確認された各種のリードスルー候補薬剤を種々の濃度で投与し,ABCA12の発現の回復をモニターし、表現形の改善を評価する。
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