研究課題/領域番号 |
23249064
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大段 秀樹 広島大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (10363061)
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研究分担者 |
井手 健太郎 広島大学, 病院, 助教 (50511565)
田中 友加 広島大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (90432666)
安井 弥 広島大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (40191118)
田原 栄俊 広島大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00271065)
小林 孝彰 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (70314010)
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キーワード | 腫瘍免疫 / 分子標的治療 / 免疫回避 / 糖鎖抗原 |
研究概要 |
本研究では、消化器癌に対する抗腫瘍免疫応答のうち、マクロファージ、NK細胞およびB細胞の活性化におけるCD47(インテグリン関連蛋白質)とSIRPα(阻害受容体シグナル制御蛋白α)を介した抑制シグナルの関与を解明し、その制御による抗腫瘍療法を開発する。マクロファージに発現するSIRPαは、正常細胞にユビキタスに発現するCD47分子と結合し、抑制シグナルを受け自己寛容機構が成り立つ。同様の抑制機構が腫瘍細胞とマクロファージ、NK細胞およびB細胞との間に成り立ち、癌細胞表面に表出する特異分子を標的とする免疫応答を抑制するか否かを検討した。まず、CD47分子表出肝癌腫瘍株(Hepal-6)をB6マウスの腹腔内に移入し、腹膜転移モデルを確立した。Hepal-6移入前に抗SIRPα抗体を腹腔内投与することで、腫瘍生着の有意な抑制を認めた。次に、1,3-galactosyltransferaseノックアウト(GalT^<-/->)B6マウスを宿主として同様の実験モデルを確立した。Hepal-6に発現するGalα1,3Gal(Gal)抗原は、GalT^<-/->B6マウスに移入すると抗体性細胞傷害機構の標的となり得る。現在、抗SIRPα抗体の移入によりこの抗腫瘍機構が助長されるか否かを検討している。また、ヒト肝癌腫瘍株(Huh-7)とヒトマクロファージの混合培養し、貪食能を定量的に評価し得るin vitro解析系を確立し、抗SIRPα抗体の添加による貪食の促進が確認された。以上の結果から、肝癌細胞は、CD47-SIRPαシグナル伝達による抑制機構によって免疫回避している可能性が示唆された。今後さらに、癌細胞が生体防御機購を掻い潜り免疫抑制環境を構築する機構として、CD47-SIRPαシグナル伝達の有意性を解明し、その制御により分子標的治療や細胞療法の効果を著明に増強する新規抗腫瘍治療戦略を開発したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたCMAH^<-/->マウスを用いた検討は、腫瘍株のNeuGc抗原の遺伝子操作が難航したため、GalT^<-/->マウスを用いた検討に変更し、順調に進展している。肝癌腫瘍株とヒトマクロファージの混合培養系を用いた検討は、計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト肝癌腫瘍株にNeuGc抗原の発現が確認されたので、NeuGc抗原の表出を欠損したCMP-NeuAc水酸化酵素ノックアウト(CMAH^<-/->)マウス(NeuGc抗原欠損)とNOD/SCIDマウスをバッククロスしてNOD/SCIDO CMAH^<-/->テマウスの作製を進めている。来年度に使用可能となる見積もりで、ヒトNeuGc表出腫瘍株を接種したヒューマナイズトマウスにヒトマクロファージや未分化NK細胞を移入するin vivoモデルを用い、抗NeuGc抗体や抗CD47抗体、抗SIRPα抗体による分子標的治療および免疫細胞治療の効果を検討する。研究計画の多少の変更はあるが、遅延する事なく進行している。
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