研究課題/領域番号 |
23249067
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
國土 典宏 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (00205361)
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研究分担者 |
唐子 堯 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00313213)
石沢 武彰 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10422312)
浦野 泰照 東京大学, 医学系研究科, 教授 (20292956)
秋光 信佳 東京大学, アイソトープ総合センター, 准教授 (40294962)
陳 〓 東京大学, 工学系研究科, 准教授 (00272394)
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キーワード | 肝細胞癌 / バイオマーカー / 画像診断 / 治療 |
研究概要 |
当該年度の研究計画では、種々のバイオマーカーをターゲットとして癌組織あるいは癌の影響を受けた病変部位を検出可能なツールとして、これまでに肝細胞癌(HCC)の血清マーカーとして臨床利用されている異常プロトロンビン(DCP)が有用であるかを検討した。肝硬変を併発したHCC患者組織におけるDCPの発現を免疫組織化学的解析により検出したところ、癌部組織だけでなく周辺の非癌部組織においても発現が認められた。また、DCPの発現性と患者の病態との関連性を検討した結果、癌部組織及び非癌部組織の双方で発現が認められた症例群において術後の生存率が低下した。以上の結果から、HCC患者組織におけるDCPの発現性は、病態が悪化した病変部位の検出に有用であることが示唆される。 さらに、モデル動物を用いたin vivo実験による有効性の評価を行うための解析系の構築を目的として、皮下に肝癌細胞を移植して腫瘍組織を形成させたBALB/c-nuヌードマウスに対して肝癌組織に集積することが知られているインドシアニングリーン(ICG)を静脈投与し、腫瘍組織を検出できるかを検討した。ヒト肝細胞癌細胞HuH-7由来の腫瘍組織を形成させたマウスにICGを投与したところ、24時間後にICG由来の蛍光が腫瘍組織において検出された。また、この発行は腫瘍組織全体で検出された上、周囲の他の組織では検出されなかった。一方、ヒト肝癌細胞HepG2由来の腫瘍組織を形成させたマウスに対して同様にICGを投与したところ、24時間後の蛍光発光はHuH-7と比較して非常に微弱なものであった。マウス皮下移植癌組織におけるICGに由来する蛍光発光は、移植する癌細胞種によって異なることが示された。以上の結果は、マウス皮下移植癌モデルを用いた腫瘍組織の検出及びICGの癌組織特異性を検討する解析系が構築されたことを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度において計画していた「バイオマーカーの有用性の検討」及び「in vivo研究による評価系の構築」に関しては、研究目的を達成したと判断した。さらに、後者の項目においては、診断への有効性と共に治療への応用を視野に入れた研究成果を見出しており、今後の研究の進展が大いに期待される。
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今後の研究の推進方策 |
異常プロトロンビン(DCP)に関しては症例数を拡大して有用性を検証するとともに、肝癌の高感度な検出に有効であるとされる他種の抗原について解析を進行させる。また、抗体によるバイオマーカー検出に関して、蛍光発光による高感度検出に有用であったインドシアニングリーン(ICG)を用いて構築されたin vivo評価系を適用し、腫瘍組織検出ツールとしてのバイオマーカーの有効性を検討する。そして、高い特異性をもって腫瘍組織を認識することが明らかとなったICGについては、皮下移植癌モデルマウスを用いて腫瘍組織縮小効果や細胞死誘導に関する病理学的解析を実施し、治療への応用的展開を図る。
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