研究課題
当該年度における研究では、前年度までに確立されたインドシアニングリーン(ICG)をモデルとしたin vivo解析系を用いて、蛍光発光と近赤外光の組み合わせによる新規肝細胞癌治療技術の創出を検討した。マウスに肝細胞癌細胞HuH-7細胞を皮下移植して腫瘍を形成させ、ICGを静注後に腫瘍に対して近赤外光を照射すると腫瘍の生育を抑制させることには成功していたが、実際に肝臓に形成された腫瘍に対して治療を施行できるかは不明であった。そこで、細胞を経脾臓で移植して肝臓に転移させるモデルを構築し、そのモデルマウスに対してICGを投与することにより腫瘍の描出を達成できるかを検討した。その結果、HuH-7細胞を脾臓移植し、5~6週間後にICGを投与して肝臓を蛍光検出装置で観察すると、HuH-7細胞由来の腫瘍が明瞭に蛍光発光にて描出された。以上の結果から、癌細胞の脾臓移植という方法を介した肝腫瘍形成モデルが、ICGの肝腫瘍特異的な発光を検出するのに有用であると示唆され、近赤外光照射の治療を評価するモデルとして期待される。一方、当該年度の研究においても、腫瘍組織の蛍光発光を達成するための癌細胞上の標的の探索を引き続き実施した。その成果として、HGFの受容体であるc-Met、肝機能のマーカータンパク質として臨床で用いられているgammaGTPが、病態の悪化した肝細胞癌患者において発現上昇することを見出した。これらのタンパク質を標的とした抗体を肝細胞癌組織に作用させて蛍光発光させることができれば、バイオマーカーの発現に基づく診断法や治療法の開発につながると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
当該年度においては、「バイオマーカーをターゲットとした高感度HCC組織検出ツールの開発」を目的としたバイオマーカーの選定に関する研究、そして「診断及び治療の両面での臨床応用への展開」に関するモデル動物を用いた評価系の構築を実施した。その結果、蛍光発光技術を用いる際の標的となりうるバイオマーカーを見出し、それを用いた診断や治療法の開発に必要な評価系の確立に成功した。
これまでに、蛍光物質を用いた腫瘍組織の検出および近赤外光を用いた光線力学的治療法の確立に必要な評価系の確立を達成した。今後はこれらの成果に基づいて、バイオマーカーの発現を基盤とする腫瘍組織の検出技術の確立を実施する。研究最終年度に当たり、これまでの成果を総括するとともに、論文発表等による外部への研究成果の発信を積極的に実施する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
Ann Surg Oncol.
巻: 21 ページ: 440-8
10.1245/s10434-013-3360-4
Drug Discov Ther.
巻: 8 ページ: 134-8
10.5582/ddt.2014.01025
Biosci Trends.
巻: 8 ページ: 266-73
10.5582/bst.2014.01116