研究課題/領域番号 |
23249072
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山田 芳嗣 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (30166748)
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研究分担者 |
内田 寛治 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60302709)
矢作 直樹 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (60158045)
瀬戸 泰之 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (00260498)
松原 全宏 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40361498)
張 京浩 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50302708)
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キーワード | 重症感染症 / 免疫強化療法 / 敗血症 / サイトカイン / 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子 / インターフェロンβ / バイオマーカー |
研究概要 |
回盲部結紮穿孔(CLP)による、マウス敗血症モデルを作成した。種々の条件を検討した結果、回盲部を先端から75%の部分で結紮し、18ゲージ針(鈍、鋭針はいずれでも可)で2カ所に穴を通す方法が、生存率の低いモデル(0-20%)条件として、21ゲージを用いる方法が生存率の高い(80%以上)条件として、安定的な結果を得ることができた。このモデルを用いて、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)GM-CSF5μg/kg皮下投与による生存率の変化を観察したところ、CLP前あるいはほぼ同時に投与した群では、むしろ生存率が低下した。初期の炎症を抑える作用を期待し、多発性硬化症等で臨床使用されているインターフェロンβ(IFNβ)14000U/body(70万U/kg)投与したところ、CLP3時間前投与は生存率をさらに下げたが、12時間後投与は、5日目の生存率を20%→60%に改善した。 末梢血中の貪食細胞(好中球、単球)の機能を測定する一つのパラメータとして、GM-CSFによる好中球表面上の接着因子CD11bの発現量の上昇に注目し、200μLと少量の全血を用いたその測定方法を開発して信頼性を評価した。同一個体からのサンプルからはばらつきの少ない結果が得られ、別個体との比較が可能なアッセイ法であることが分かった。さらに、GM-CSF好中球のプライミング効果は従来言われている時間(2時間)より早く発現し、CD11bの細胞外発現は、細胞内にあらかじめ作られているCD11b蛋白が細胞外へ移動していることが確認された。 敗血症患者の予後を規定するバイオマーカーの検索:東京大学救急部・集中治療部の救急外来(ER)から救命ICUへ入院した、重症感染を持った患者の記録のうち、2011年の1年分を抽出し、入室当日から7日目の各種生体情報と予後との関連性を検討した。その結果、該当する65例の内、ICU入室後28日以内死亡群と生存群の比較では、入室後1目目の白血球数、好中球数が生存群と比べ死亡群で有意に低かった。免疫機能の抑制が予後を左右している可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
安定した動物モデルの作成に多少時間を要した。サイトカイン投与による効果の再現性を見るため複数回のシリーズをこなす必要があった。 敗血症患者の予後予測因子解明に向けた後ろ向き研究では、電子カルテからのデータ抽出が効率的にできるソフトウェア設定ではないため、結局担当医師による目視確認を婁し、多大な労力と時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
電子カルテからの該当データが自動的に引き出せるようにソフトウェアの段階で改良が必要であるが、第一義的に診療に持ちいるものとしてカスタマイズされているため、直ちに改良を施すことができない。対策として、前向き研究に際しては昨年度得られた結果をもとに、より効率的なデータベースを構築する.動物モデルでは、病理組織や、免疫担当細胞の機能をより詳細に検討して、生存率を改善させる効果のメカニズムを明らかにする。また感染実験を実施可能な実験施設を確保次第、重症感染後の免疫機能低下による易感染性のモデルを検討する。サイトカインによる免疫賦活療法の臨床試験申請に向け、根拠となる動物実験データの蓄積につとめる。
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