研究課題/領域番号 |
23249075
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
和氣 徳夫 九州大学, 医学研究院, 教授 (60091584)
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研究分担者 |
浅野間 和夫 九州大学, 医学研究院, 助教 (30380413)
恒松 良祐 九州大学, 医学研究院, 助教 (20380529)
井上 貴史 九州大学, 大学病院, 助教 (70380417)
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キーワード | 子宮体癌 / MDM2型 / シグナロソーム / AHR / -130C/T多型 / NFIC |
研究概要 |
私たちはこれまで子宮体癌の発生にRas/ERα/MDM2/P53/P21シグナロリームが重要な役割を担っていることを明らかにした。これらのシグナロソームを構成する各遺伝子の体細胞変異は低率であるためSNPハプロタイプにより各遺伝子機能が変化し子宮体癌の発生に関与するかを検討した。 (1)本年度MDM2SNP309、TP53Arg72Pro、ESR/PVull、Xbal、P21Codon31遺伝子多型と子宮体癌発症のリスクとの関連について検討した。子宮体癌125例、対照群200例の血液からDNAを抽出し解析した。MDM2SNP309d/Gは、T/Tに対し子宮体癌Odds比1.76(0.93~3.30)と統計学的に有意ではないが増大傾向にあった。TP53、ESR1、P21SNPと子宮体癌リスクの間には相関を認めなかった。 しかしMDM2SNP309G/GとTP53Codon72Arg/Argの組み合わせは補正後の子宮体癌Odds比2.53(1.03~6.21)、inferactionP値0.04で、両遺伝子間に統計学的有意な相互作用を認めた。 (2)ダイオキシンはAHR (Aryl Hydrocarbon Roceptor)と結合し、細胞内毒性シグナルを活性化し、がん発生を含めた健康被害の原因となる。本研究ではAHRゲノム多様性と健康被害の解析も研究目的に加えた。AHRプロモータ領域は翻訳開始点から-452bpに存在した。本領域には2種類の多型が存在するが、そのうち-130C/TSNPはAHR転写に強い影響を与えた。 T/TはC/Cに比し約1.75倍の有意な転写亢進が示された。-130bp領域にはNFIC転写因子結合サイトが存在する。免疫沈降法、ゲルシフトアッセイ法さらにはNFIC蛋白に結合するAHRプロモータシークエンスをクローニングし解析した結果、NFIC蛋白はCアリルとの結合力が強く、Tアリルの場合には結合が低下することが判明した。C/C型AHRプロモータではNFICが結合しSP1を介する転写が抑制され、T/T型AHRプロモータではNFICが結合しにくく、結果としてSP1を介する転写が亢進することも判明した。一般集団でのT/T型ジェノタイプは約10%に存在し、ダイオキシンによる健康影響の程度に関与しているこが示唆された。今後、油症患者におけるAHR-130C/TSNPを解析し、症状発現の程度をCC、C/T、T/T型で解析する予定である。本研究は既に九州大学倫理委員会の承認を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TP53、ESR1、P21遺伝子多型と子宮体がんリスクの間に相関を認めなかったが、MDM2P2プロモータ領域内のNFKB結合サイトにSNPを同定しP53応答性MDM2P2プロモータ活性に関与している可能性を発見した。さらに、ダイオキシン類による細胞毒性シグナルの中心となるAHRプロモータ領域に新たなSNPを同定しAHR発見変化に関与していることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
AHR転写活性を亢進するAHR-110T/T多型の同定を油性症患者集団で実施し、子宮体癌を含む様々ながん発症リスクを解析する。さらにMDM2P2プロモータ領域のSNPとP53俗答性MDM2P2プロモータ活性の関連を明らかにし子宮体癌発生メカニズムを解析する。
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