研究課題/領域番号 |
23249076
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
吉村 泰典 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (10129736)
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研究分担者 |
丸山 哲夫 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (10209702)
内田 浩 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (90286534)
升田 博隆 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80317198)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 幹細胞 / 再生医学 / 子宮 / 疾患モデル |
研究概要 |
ヒト子宮内膜に加えて子宮平滑筋における幹細胞の振る舞いを明らかにするために、まず子宮平滑筋組織のin vivo再構成系の開発を行った。ヒト摘出子宮から分離した全子宮内膜細胞、全子宮平滑筋細胞、および両者の混合細胞を、それぞれ重度免疫不全マウスの腎被膜下に移植し組織構築を検討したところ、全子宮内膜細胞では、既報の通り、腺管構造を有する内膜様組織が再構成された。子宮平滑筋細胞単独では、平滑筋細胞マーカー陽性の均一な細胞でほぼ全体が構成される組織が構築され、子宮平滑筋組織が再構成・再構築されたと考えられた。一方、混合群では、平滑筋細胞は構築組織周囲に主に分布し、中心に腺管構造を有する内膜組織が構築された。平滑筋組織の中に腺管がびまん性に存在する腺筋症様組織の再構築を期待したが、内膜層および平滑筋層といった組織極性を保持したミニ子宮様組織が構築された。しかし、逆にこの再構成系は、そこに子宮平滑筋腫や子宮腺筋症由来の幹細胞をもぐり込ませることで、筋腫様あるいは腺筋症様の病変組織を呈することが期待できる点で、幹細胞の生理的および疾患における役割をin vivoで解析しえるシステムになり得る可能性が示唆された。 一方、ヒト子宮の再生・再建医療を見据えて、その基盤知見と技術を開発するために、ラットを用いて脱細胞化・再細胞化による子宮再建技術の開発を行った。その結果、SDSなどの界面活性剤を用いることで、細胞外マトリックスや微小血管構造骨格を維持したままラット子宮から細胞を除去する(脱細胞化)ことが可能な技術を開発した。また、この脱細胞化マトリックスに、子宮細胞などを注入することにより、子宮様組織を再構築し得る(再細胞化)ことが判明した。さらなる実験条件の設定や脱細胞化・再細胞化方法の改善は必要であるが、今後の子宮再建・再構築に際しての基盤知見と基盤技術が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト子宮内膜および子宮平滑筋のin vivo再構成系や脱細胞化・再細胞化技術の確立に関しては、おおむね目標としたレベルには達した。しかし、これらの系はいずれも更なる改善・改良が必要である点、さらにこれらを用いた幹細胞の追跡と時空間的介入によりその振る舞いを変化させるといったシステムの確立までは到達していない点で、「やや遅れている」とした。また、平成24年4月~7月にかけて研究室が移転したことも研究が当初の予定から遅れた一要因となった。
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今後の研究の推進方策 |
レンチウイルスを用いて子宮内膜幹細胞をマーキングする方法は確立しているので、この方法を子宮平滑筋幹細胞にも応用して、子宮平滑筋再構成系に供する。さらに、発光蛋白や蛍光蛋白に加えて非機能型膜受容体を同時発現させることが可能なレンチウイルスを開発しているので、これを幹細胞に感染させた後に、非機能型膜受容体に対する抗体と磁性体を用いて幹細胞に時空間的な介入をすることにより、組織再構築にどのような影響を及ぼすかを検討する。一方、脱細胞化マトリックスのin vitro再細胞化方法を改良するとともに、in vivoで子宮に埋め込むことにより、子宮の構造的再建および妊孕能を指標にした機能再建を検討する。さらに、このin vivo再細胞化の系と上述の細胞追跡法を用いて、幹細胞の振る舞いを検討することも可能である。従って、これらの一連の研究を個別かつ並行的に展開することは、翻って最終的に統合的な研究に収斂し得ることになり、これを以て本研究の推進方策とする。
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