研究課題
ヒト皮膚由来線維芽細胞を、コラーゲンスカフォールドに播種する三次元培養条件下において、LTBP-4添加により弾性線維の再生を実現するため、コラーゲンスカフォールドの平均孔径(20~25μm, 100μm)と架橋条件(110度熱架橋、120℃熱架橋、140度熱架橋、140度熱架橋+グルタールアルデヒド架橋)、LTBP-4濃度について更に検討をすすめた。播種後1週間、2週間、3週間でサンプリング後、免疫化学染色にてエラスチン,フィブリリン1の沈着を観察、定量化したところ、平均孔径25μm、架橋条件として120℃熱架橋のみと140度熱架橋のみのコラーゲンスカフォールドで両蛋白の沈着量が増加した。一方で、100μm孔径はいずれの条件でも沈着が認められなかった。25μm孔径、120度熱架橋のみと140度熱架橋のみのコラーゲンスポンジをそれぞれ使用した際の、エラスチン沈着量を定量化して比較したところ、120度熱架橋のみのスポンジで最もエラスチン沈着量が増加した。このため、今後の三次元培養は、このスポンジを使用して実施することとした。LTBP-4の添加濃度、添加回数を検討するにあたり、予想外にデータにばらつきが出たため、コラーゲンスポンジのサンプル間の差やLTBP-4の濃度を調査、確認して、ばらつきの原因解明、修正を行なった。
2: おおむね順調に進展している
本年度までで、三次元培養条件として最も重要なコラーゲンスカフォールドの作成条件を決定できたため。このスカフォールドの利用だけで、これまでの線維芽細胞三次元培養下では再生できなかった弾性線維が、免疫染色において観察できるようになったことは、画期的な成果である。今後の三次元培養に用いるコラーゲンスカフォールドとして、120度熱架橋処理をした25μ平均孔径のコラーゲンスポンジを決定できた。
一次的にデータにばらつきが生じたが、それは、コラーゲンスカフォールド作成時に、熱架橋処理を行なうオーブン内での温度管理を徹底することにより解決できた。今後、三次元培養に使用するスカフォールドは、120度熱架橋処理をした25μ平均孔径のコラーゲンスポンジのみとし、LTBP-4の添加濃度(0.5,10μg/ml)と、添加回数(1回、毎週)とで、弾性線維再生の促進度合いに違いがでるかを検討する。また、これまでは、弾性線維が再生される程度を、免疫組織化学染色において評価してきたが、これに加えて、LC/MS/MSによる再生組織中のデスモシン定量を行なうことにより、エラスチン量を定量することを試みる。また、三次元培養した組織を、免疫不全マウスに移植し、in vivoにおける弾性線維再生を検討する。移植後、組織を取り出し、まずはEVG染色で確認できるような弾性線維が再生されているかを観察する。さらには、移植組織のエラスチン量の定量を、LC/MS/MSによる再生組織中のデスモシン定量により試みる。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)
J Plast Reconstr Aesthet Surg,
巻: 66 ページ: e229-233
10.1016/j.bjps.2013.03.018.
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻: 110 ページ: 2852-2857
10.1073/pnas.1215779110.