研究課題/領域番号 |
23249084
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
丹沢 秀樹 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (50236775)
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研究分担者 |
白澤 浩 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (00216194)
齋藤 謙悟 千葉大学, 大学院・医学研究院, 助教 (70451755)
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キーワード | リポソーム / 腫瘍特異的 / 分子標的治療 |
研究概要 |
本研究は、抗癌剤単剤投与法に比較して、新規治療法-1群(耐性遺伝子発現阻害物質や治療増強剤と抗癌剤を併用投与)群と新規治療法-2群(耐性遺伝子発現阻害物質や治療増強剤とともに抗癌剤をハイブリッド型リポソームに搭載して投与)における抗癌効果を最大限にする条件を求め、新規治療法の開発を目的とする。特に、リポソーム搭載を効率よく行うためには、作製時に高濃度で溶解が可能で、最終的に低濃度で効果がある薬剤を検索する必要がある。リポソームはこれまでに開発したフォスファチジルコリンとコレステロールを主成分とし、シンドビス(SIN)蛋白をハイブリッドしたものを用い、少しずつ改良を加えて性能を改善しながら実験を進めた。薬剤の選択は、シスプラチン耐性遺伝子PDE3Bに対する阻害剤であるシロスタゾールとミルリノンから検討した。前者は、最終濃度100μMで細胞傷害性を示したが、後者は高濃度にても効果がなかった。薬剤封入は、水和時に内水相か、膜形成時に脂質膜内へ行う。シロスタゾールは難水溶性であったが、まず、65℃エタノールで高濃度に溶解後、65℃バッファーに超音波で希釈し、10mM水溶液を作製し水和した。それぞれのシロスタゾールの予想最終添加濃度は20μMと100μMであった。次に、シスプラチン耐性癌細胞株に対する障害性を検討した。従来法はシスプラチン10μMを単剤で投与し、新規治療法1ではシロスタゾール20μM、あるいは100μMをさらに併用投与した。新規治療法2ではSINハイブリッドリポソームヘシロスタゾールを内水相、あるいは脂質内へ含有させたものにシスプラチン10μMをシロスタゾール20μM、あるいは100μMを合わせて添加・搭載した。添加後4時間インキュベートし、薬剤を除いて新しい培養液にて72時間インキュベート後、細胞傷害性を測定した。結果は、新規治療法2の内水相へ添加した場合、コントロールに対して約40%増強効果があり、脂質内に添加した場合も約30%増強効果があった。これに対し、新規治療法1は約10%から15%の増強効果があった。問題点としては、新規治療法2で、SINハイブリッド時に、脂質からのシロスタゾールの漏洩が考えられ、これを改善すればさらなる増強効果が得られるものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腫瘍特異的蛋白が付与できる組成のリポソームをさらに改良して、抗癌剤や耐性遺伝子阻害剤など薬剤の内封率を向上させながら実験を進めることができた(この点は非常に苦労した)。さらに、抗癌効果の増強も得ることができた。放射線耐性に関しては、実際に人体に投与されている薬剤の中からcox2阻害剤を用いた治療法をin vitroで開発することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらにリポソームへの薬剤内封性をあげるとともに、in vivoで効果増強を得られる治療法を開発する。また、マウスでの毒性試験も行い、前臨床試験まで終了させたい。放射線治療の効果増強法に関しても、今までは人体に投与されている治療薬ではなく、実験試薬を用いた治療法を開発していたが、平成23年度に、すでに人体に投与され、治療薬として用いられている薬剤を用いた治療効果増強法をin vitroで開発したので、最終年度である平成25年度には実際の臨床応用を目指した新規治療法を前臨床試験まで終了させる予定である。
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