研究課題
歯の欠損の治療は、現在人工材料を用いた補綴処置が主である。しかしこれまでの動物、細胞を用いた活発な研究の成果により、歯の再生医療が現実味を帯びてきた。本研究課題では、1)再生歯胚を作製するための成体内細胞シーズの探索、2)歯胚形成誘導遺伝子を用いた歯の再生医療システムの構築に向けた探索研究、3)再生歯胚・再生歯の移植システムの開発、4)IGF-1をはじめとするサイトカインとメカニカルストレスによる形態制御技術の開発を推進し、歯の再生医療システム構築のための基盤技術開発を行う。まず、マウスiPS細胞を用いた再生歯作製のための上皮および間葉細胞の誘導を行った。 その結果、マウスiPS細胞をマウス歯胚細胞から採取した培養上清を用いて培養することにより、複数の歯性上皮あるいは間葉細胞マーカーを発現する細胞に誘導できることが明らかとなった。また、分化した細胞の上皮および間葉細胞マーカーのタンパク質発現を解析するために免疫蛍光染色を行い、デコンボリューション倒立顕微鏡を用いて現在解析中である。さらに我々は、IGF-1により歯胚が大きくなることを見いだしており、その分子制御機構の解明を行った。以上の研究から、再生歯胚作製のためのiPS細胞由来歯性上皮および間葉細胞の誘導に関する基盤的な知見を得ることができ、今後より効率的なiPS細胞由来上皮および間葉細胞の誘導方法を確立するうえで大きな意義がある。今後は、iPS細胞から誘導した上皮および間葉細胞を3次元的に構築し器官培養と実験動物への移植実験を行うこと によって、再生歯胚の作製を目指す。
2: おおむね順調に進展している
歯の再生医療システムの構築に向けたiPS細胞から歯性上皮および間葉細胞の誘導実験を行い、歯性上皮あるいは間葉細胞マーカーを発現する細胞の誘導が達成できたため。
今後は、iPS細胞から歯性上皮および間葉細胞誘導方法の確立とそれらを用いた再生歯胚の作製、およびiPS細胞由来再生歯胚の移植 システムの確立を目指して、以下の実験を行う。1)歯胚形成遺伝子を用いた歯の再生医療システムの構築に向けた探索研究の達成を目指し、歯胚形成遺伝子をマウスiPS細胞に遺伝子導入して作製した、歯胚形成遺伝子を有する上皮および間葉細胞を再構成させて再生歯胚を発生させる。発生させた再生歯胚から歯を形成させてマイクロCT撮影し、3D-CT画像を3次元構築して定量的形態 計測を行うとともに組織学的に解析する。2)メカニカルストレスおよびサイトカインによる再生歯胚形態制御技術の開発を目指し、単一化した歯胚間葉・上皮細胞をコラーゲンゲル内に注入し再構成歯胚を作製して、IGF添加するとともに振動刺激を与えて培養して発生した形態制御再生歯胚を組織学的に解析する。負荷するメカニカルストレスは、振動刺激以外に伸展刺激なども検討する。3)再生歯胚・再生歯の移植システムの開発を目指し、iPS由来の細胞を用いた再生歯胚作製技術、歯形成遺伝子導入による再生歯作 製技術および形態制御再生歯胚作製技術を確立させた上で、H25年度には、それらの技術を用いて再生歯胚を作製する。作製した再 生歯胚を成体マウスの臼歯を抜歯して自然治癒させた顎骨に移植して、再生歯胚の発生と萌出を解析する。マイクロCT解析および組織学的解析を行い、移植システムの基盤的研究を推 進する。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (13件)
Br J Dermatol
巻: 164(2) ページ: 356-362
10.1111/j.1365-2133.2010.10016.x
Calcified Tissue International
巻: 89 ページ: 65-73
10.1007/s00223-011-9494-0
Bone
巻: 49 ページ: 975-989
10.1016/j.bone.2011.06.033
PLoS One
巻: 6 ページ: e21531
10.1371/journal.pone.0021531