研究概要 |
歯の欠損の治療は、現在人工材料を用いた補綴処置が主である。しかしこれまでの動物、細胞を用いた活発な研究成果により、歯の再生医療が現実味を帯びてきた。本研究課題では、①再生歯胚を作製するための成体内細胞シーズの探索、②歯胚形成誘導遺伝子を用いた歯の再生医療システムの構築に向けた探索研究、③再生歯胚・再生歯の移植システムの開発、④IGF-1をはじめとするサイトカインとメカニカルストレスによる形態制御技術の開発を推進し、歯の再生医療システム構築のための基盤技術開発を行った。 平成25年度は、歯性間葉細胞発生過程で認められる因子の発現亢進を示す細胞をマウスiPS細胞から誘導し、PCRによる遺伝子発現解析とデコンボリューション倒立顕微鏡による免疫蛍光解析を行った。得られた細胞を、胎生マウス歯胚から単離した歯性間葉細胞と一定濃度で混合し、それらを歯性上皮組織と再構成して器官培養した結果、歯胚の発生が認められた。得られた歯胚をマウス腎皮膜下へ移植し、歯の発生について現在解析中である(論文作成中)。また、再生歯胚の形態制御技術の開発を目指し、IGF-1により再生歯胚の大きさが増大するメカニズムの解析を行った。その結果、IGF-1は歯性間葉細胞の増殖と象牙芽細胞分化を亢進することが明らかとなった(論文作成中)。さらにメカニカルストレスを応用した再生歯胚作製のための基盤的知見を得るために、メカニカルストレスに対する骨細胞と頭蓋縫合の反応を解析し、それぞれ論文発表(Hoshi, Takeshita, Takano-Yamamoto et al., J Bone Miner Res, 2013)と論文投稿を行った。 以上の結果から、iPS細胞由来歯性細胞から再生歯胚の作製が可能であることが示された。また、IGF-1とメカニカルストレスは、再生歯胚発生における分子機構を制御することが示唆される。
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