研究課題
本研究課題は、分子疫学研究に基づく予測歯周病学の基盤構築を行うと同時に、抽出された歯周疾患関連遺伝子の発現ならびに機能解析を目的としている。平成25年度の研究成果について以下に報告する。当初の計画通り、研究への参加の承諾が得られた関西在住の長寿者家族(百寿者研究)、高齢双生児レジストリー登録者、ならびに侵襲性歯周炎患者を対象にした疫学研究を継続して行った。百寿者研究では、73歳(72-74歳)群の住民に対し3年追跡調査を目的として歯周組織検査、一般採血等を実施し、4mm以上のポケットの割合が30%の被験者において、慢性歯周炎で最も多く検出されるPorphyromonas gingivalisの血漿抗体価が有意に高いことを見出した。高齢双生児に関しては、96組192名の被験者に対し歯周組織検査・パノラマレントゲン検査等を実施し、残存歯数と動脈硬化に有意な関連性があることを見出した。侵襲性歯周炎患者については、13名の被験者に対し、歯周組織検査・デンタルX線検査に加え、エクソーム解析を実施した。疾患関連候補遺伝子のスクリーニングを目的として、non-synonymousで1000ゲノムデータベースでの遺伝子多型発現頻度が0.01以下の遺伝子を抽出したところ、18遺伝子が同候補遺伝子として同定された。さらに、PLAP-1/asporin、ferritin等の歯周組織の恒常性維持に関与すると考えられる遺伝子の機能解析を行った。PLAP-1/asporinのN末端に位置するアスパラギン酸の連続配列数の違いが硬組織形成能に影響を及ぼすことが明らかとなったので、侵襲性歯周炎患者55名の被験者に対して同アスパラギン酸の連続配列数を遺伝子多型フラグメント解析法により検討した。その結果、同アスパラギン酸の連続配列数はD12からD19まで存在することを見出した。また鉄分により誘導されるferritinが歯根膜細胞による石灰化物形成を制御することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
研究への参加の承諾が得られた長寿者家族、高齢双生児、侵襲性歯周炎患者を対象とした疫学研究を、当初の計画通りに実施することができた。また、PLAP-1/asporin、ferritin等の歯周組織の恒常性維持に関与すると考えられる遺伝子の機能解析を遂行した。以上のことから、当初の計画通り概ね順調に研究は進展していると判断できる。
平成26年度も、平成25年度同様に、研究への参加の承諾が得られた長寿者家族、高齢双生児、侵襲性歯周炎患者を対象とした疫学研究を継続する。長寿者家族に関しては、関西在住の83歳(82-84歳)群の住民に対し3年追跡調査を実施する。高齢双生児については、引き続き大阪大学での高齢双生児レジストリーに登録された被験者を対象に、歯周組織検査、パノラマレントゲン検査等を遂行する。侵襲性歯周炎患者については、新たに10検体のエクソーム解析を実施し、疾患発症関連遺伝子の探索に努める。上記の分子疫学研究に加えて、歯周組織の恒常性維持に影響を及ぼす遺伝子のin vitroならびにin vivoの両面から機能解析を行う。上記の分子疫学研究の結果を基に、予測歯周病学の基盤となる歯周病患者データベースを作成すると同時に、機能解析により得られた疾患関連遺伝子を指標とした診断プログラムの構築を目指す。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件)
J Dent
巻: 42 ページ: 556-564
10.1016/j.jdent.2014.02.015.
J Periodont Res
巻: 49 ページ: 260-267
10.1111/jre.12103.
Journal of Dental Research
巻: 93 ページ: 400-405
10.1177/0022034513520549
歯界月報
巻: 749 ページ: 54-57