研究分担者 |
白坂 蕃 帝京大学, 経済学部, 教授 (40014790)
水嶋 一雄 日本大学, 文理学部, 教授 (00096918)
落合 康浩 日本大学, 文理学部, 教授 (40246799)
泉山 茂之 信州大学, 農学部, 教授 (60432176)
宮原 育子 宮城大学, 事業構想学部, 教授 (80295401)
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研究概要 |
H23年度は,(1)キルギス東部のサリタシ・エルチャト保護区での調査を開始し,(2)キルギス南部アライ谷およびタジキスタン北部カラクル湖流域での本格的調査の着手,(3)タジキスタン南部ワハン回廊での調査の展開を行った。 当初は,サリタシ・エルチャト保護区において,アンケート調査・移牧聞き取り調査・気象観測機器設置を行う予定であったが,入域許可の関係で,野生動物行動圏調査(GPS首輪設置・データ回収)および植生調査のみを行った。GPS首輪を用いた野生動物行動圏調査は,季節データの収集が可能になったが,通年データ収集用に手法改善を行っている。棲息動物の把握を特殊なカメラを用いて行い,ユキヒョウなど数種類の動物の確認に成功した。 キルギス南部・タジキスタンでは,移牧聞き取り調査・放牧強度を用いた土地荒廃調査,持続的観光調査を行った。特に,聞き取り調査に関しては,独立以降の急速な土地利用変化が将来の放牧地の持続性に影響を与えかねないことがわかってきた。また,夏と冬の放牧地の分布についての情報のアップデートを行った。 ジオエコツーリズムマップのプロトタイプ版作成を行い,改良のための議論を行った(H24年度に印刷予定)。 地球惑星合同大会(幕張)のGLP国際シンポジウムおよび国際会議Managing Alpine Future II(インスブルック)で成果の一部を口頭発表し,国際ワークショップ(ネパール,クンブ地域)で中央アジアの研究者とパミールの氷河融解ならびに氷河湖決壊洪水に関する情報交換会をもち,将来の山岳社会の持続性維持のために氷河湖決壊洪水に関する調査を開始する必要性について議論を行った。また,キルギス南部で国連大学主催のサマースクールにおいて,渡辺・水嶋・落合がレクチャーを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3割交付が遅れたことが野外調査に大きな影響を与えたが,その分は1年遅れでデータ収集を行うことが可能である(研究期間内には問題なく終了する見込み)。また,サリチャト・エルタシ保護区では軍隊からの許可が下りなかったため,社会調査ができなかったが,その分,アライ谷とタジキスタンでの調査に勢力を注ぎ,あらたな成果を得ることができるようになった。これらを相殺すると,現在までの進捗状況はおおむね良好と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
測量・気象観測機器設置に関しては,調査出発までに交付金の3割が入らなかったため,あきらめざるを得なかったので,H24年度に実施を予定している。アライ谷とタジキスタン側での調査は順調であり,これまで海外の研究者による研究を含めて研究活動がまったくなかったサリチャト・エルタシ保護区については,自然環境調査は可能であるので,それを継続させるとともに,社会調査のための入域許可については,年による状況の変化が激しいため,再度,許可申請を行う。
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