研究課題
本研究は、東北アジアにおける変動期の意義について、主に経済学と歴史学の学際的研究によって考察・解明することを目的に、19世紀末~20世紀初頭を第一変動期、20世紀末~21世紀初頭を第二変動期として位置づけ、変動に伴う人と物の移動の様態、辺境地域における社会の変化、あるいは共生様態の解明を行った。第一変動期班は、主に中国北部辺境のモンゴルや東北三省を対象とした。国家政策面では人の移動を禁止していたとされる清朝の「封禁政策」を再検討した結果、清朝の目的が移動の禁止自体ではなく、統治カテゴリー間の人の往来のコントロールにあったことが解明された、その上で、実際の人の移動の結果生起する具体的な社会関係の様態として、フルンブイルからモンゴル北部への遊牧民の移動にともなうアイデンティティー形成の在り方や、移住民と現地住民の間の婚姻などの日常的な交流の様態が解明された。またそのような多民族的な辺境地帯における住民が重層的アイデンティティーを有することが具体的に解明された。第二変動期に関しては、主に露中・中朝国境地帯における越境的共生構造の生成の有無に関する研究が行われた。とくにロシアへの中国人労働移民コミュニティーに対するロシア側社会の認識の在り方が解明されるとともに、希薄な辺境の労働人口を補う労働移民の意義が解明された。同時に中朝辺境では国境貿易が露中国境地帯ほどには展開していない状況も指摘され、地域によって異なる状況があることが明らかになった。清代と現代の東北アジア辺境部における活発な人の移動と重層的住民構成が、変動の基盤に存在することが判明したことにより、人の往来によって生成する共生構造の在り方の解明が次の課題として浮上した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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経済研究
巻: 66(1) ページ: 72-93
巻: 66(1) ページ: 55-71
史滴
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中国蒙古学
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