研究課題
シリアの内戦の激化は、パルミラでの現地の調査研究から3D計測システムを活用した葬送用彫像の特色の抽出を通して彫像制作に関わる工人や工房の特性からパルミラ社会を理解することに焦点を合わせてきた。本年度は、ドイツ・ミュンヘン古代彫刻美術館が所蔵する2体のパルミラ胸像とローマ時代のハドリアヌス帝頭部像、レバノン・ベイルートアメリカ大学博物館所蔵の27体のパルミラ胸像、オーストリア・ウィーン美術史美術館所蔵の2体のハドリアヌス帝像の頭部の3D計測を実施した。平成25年度よりパルミラ葬送用胸像を中心に3D計測を実施してきた結果、顔面部位の位置にある一定の規範性が認められることからパルミラの彫像が影響を受けたギリシャ・ローマの彫像の計測も実施した。特にパルミラに深く関わったハドリアヌス帝の彫像に焦点を当てた。さらに彫像の制作に関わる工房・工人の同定に繋がる各彫像の顔の個性を検討するために、彫像の顔の部位の配置に関わる割り付け及びその比率について検討した。パルミラの彫像制作にも、古代ギリシャに始まる黄金比1対1.618(約5:8)から生み出された人体の表現比率システムが適用されていると考えられる。この割り付けシステムは、人の顔をいかに美しく整ったように見せるか、そのために考えられた最も有効な手段として各工房間で共通して所持していたと考える。よって、パルミラの彫像の顔面にもその割り付け比率を基本として各部位に共通して使用されていると考えられる。パルミラの彫像において各個人の顔の各部位の個性を表現する割り付け比率の存在の有無を考えた。彫像の各部位の計測箇所は、基本的には人類学における計測点を採用し、彫像の顔の表現では人体の顔の計測箇所と同じように計測するには難しい箇所があるため、彫像の顔面の部位比較に有効な基軸や計測箇所を新たに設定した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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