研究概要 |
SCOR(海洋研究科学委員会)の支援のもとで,約20カ国が参入する国際共同研究GEOTRACES(海洋の微量元素・同位体による生物地球化学研究)計画における先導的役割を果たすために,我が国の保有する海洋環境試料のクリーン採取技術と高精度化学分析技術を活用し,太平洋での観測調査と試料採取,および国内外のGEOTRACES計画関連会議における成果発表と情報交換を積極的に実施した。学術研究船白鳳丸によるGEOTRACES航海KH-11-7(7月16日:東京出港,8月4日:東京帰港)においては,北西太平洋の東経165度線に沿って北緯50度から30度までの海域を集中的に精査した。また東北地方太平洋沖地震(平成23年3月11日)の直後の海洋環境把握のため,本州東方海域においても微量元素・同位体の分布状況を詳しく把握するための試料採取を行った。さらに,白鳳丸KH-11-10次航海(12月1日:東京出港,1月25日:カヤオ寄港)に参加し,太平洋熱帯~亜熱帯海域において同様にクリーン観測と試料採取を実施した。これらのフィールド調査と並行して,国際的にはIUPAC International Congress on Analytical Sciences 2011(5月,京都),GEOTRACES科学推進委員会(9月,厦門,中国),SCOR/InterRidge第135作業部会(10月,杭州,中国),PICES年次総会(10月,ハバロフスク,ロシア)等,また国内では,日本地球化学会年会(9月,札幌)および日本海洋学会秋季大会(9月,福岡)に出席し,我が国のGEOTRACES研究の成果報告と,国内外GEOTRACES代表者との打合せ・意見交換を鋭意実施した。3月8,9日の2日間にわたり,東京大学大気海洋研究所共同利用研究集会「白鳳丸クリーン観測による微量元素・同位体研究の現状と展望(GEOTRACES計画)」を主催し,20件の講演をもとに,インドのGEOTRACES研究者も交えての活発な議論を通じて,本研究の学術的深化と研究協力体制の構築を大きく進展させた。
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