研究課題
学術研究船白鳳丸による2回の長期航海(KH-14-3次航海(6月23日~8月11日,北太平洋・北極海)およびKH-14-6次航海(12月2日~2月26日,南太平洋・南極海)を予定通り実施し,白鳳丸のチタン製アーマードケーブルを用いたクリーン海水採取と船上のクリーンルーム中での試料処理と化学分析を行った。特にKH-14-6次航海は我が国が太平洋において分担するGEOTRACES航海のひとつ(GP-19航海)として国際的に登録されたもので,西経170度ラインに沿って赤道から南極海(南緯65度)に至る測線に沿って,緯度ほぼ5度おきの海洋観測(表面~海底直上まで)を完遂した。GEOTRACES計画における必須分析項目(キーパラメータ)である鉄,亜鉛,銅,マンガンなど微量重金属,炭素・窒素・鉛・ネオジムの同位体などの分析を,採取した海水試料について鋭意実施中である。GEOTRACES計画に関する国際的情報交換を密に行うため,SCOR総会(9月15~18日,ブレーメン),GEOTRACESデータ管理委員会(10月6~7日,ケープタウン),GEOTRACES研究推進委員会(10月8~10日,ケープタウン)に代表者を派遣し,我が国の研究進捗状況を発表し意見交換を行った。また日本学術会議SCOR分科会GEOTRACES小委員会を中心として,今後の計画策定と外部からのコメント・評価を受けることに努めた。得られた研究成果をゴールドシュミット国際会議(6月8~13日,サクラメント),アジア大洋州地球科学連合大会(7月28日~8月1日,札幌),日本地球化学会年会(9月16~18日,富山)など国内外の学会等で発表するとともに,原著論文を執筆・公表した。また埼玉県花咲徳栄高校において出前授業(11月18日)を行い,理系の高校生約100名に海洋研究の目的や面白さについて講演した。
2: おおむね順調に進展している
年度当初の計画通り,学術研究船白鳳丸による研究航海を実施できた。航海中は海況不良などの理由により,当初計画を一部変更せざるを得なかったものの,調査予定海域を網羅して,設定した測点での観測・試料採取をおおむね完遂することができた。採取した試料の船上分析および航海後の分析もほぼ順調に実施されつつあり,データの蓄積が進んでいる。年度当初の計画通り,国際会議,国際学会,国内学会大会に参加し,国際的な研究連絡を活発に継続するとともに,研究成果の公表に努めた。原著論文4編を印刷・公表した。アウトリーチ活動としての出前授業は1回にとどまったものの,100名を超える理系の高校生に海洋化学の意義や面白さを伝えることができた。
本基盤研究(5年間)の最終年度として,これまでに太平洋を中心に実施してきた白鳳丸長期航海(2012年度のKH-12-4次航海(北太平洋亜寒帯),2014年度のKH-14-6次航海(南太平洋・南極海)など)によって回収したクリーン海水試料の化学分析を完遂し,総合的な研究成果のとりまとめに進む。国際GEOTRACES計画に対して,得られた高精度データを登録するとともに,レベルの高い国際会議(ゴールドシュミット会議,米国地球物理学連合秋季大会など)および国内会議(日本海洋学会秋季大会,日本地球化学会年会など)において研究成果を発表する。合わせて原著論文の執筆・投稿も精力的に行う。アウトリーチ活動(出前授業,サイエンスカフェなど)を重視し,機会を捉えて一般向けの情報発信に努める。総まとめとして,大気海洋研究所の共同利用シンポジウムを年度末に開催する。本基盤研究5年間の研究成果を中核に,我が国の近年のGEOTRACES研究成果をまとめ,次の研究計画具体化への出発点とする。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (2件)
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