研究課題/領域番号 |
23253007
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小宮 剛 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (30361786)
|
研究分担者 |
片山 郁夫 広島大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (10448235)
|
キーワード | 冥王代 / ジルコン / ラブラドル / ネーン岩体 / 太古代 / 海洋プレート層序 / 表成岩 / 大陸地殻 |
研究概要 |
地球上に岩石や地質体が残されていない時代は冥王代と呼ばれ、いまだ地質・生命進化の知識において暗黒の時代とされる。本研究の目的は、冥王代から太古代初期のテクトニクスや表層環境を解読するために、カナダ・ラブラドル地方のネーン岩体で地質調査を行ない、本地域の詳細な岩相地質図と年代地質図を作成する事である。 本年度は、7-8月の一ヶ月間、延べ7人で、ラブラドル・サグレック地域のネーン岩体の地質調査を行なった。極地方のため、夏以外は雪に閉ざされ天候が悪いこと、シロクマ等の危険動物に対する安全の確保や現地での移動手段(ヘリやボート)などが事前では課題とされたが、それらを対処し、円滑に調査を行うことができた。特に前半は天候に恵まれ、順調に調査を行う事ができ、約1200の岩石試料を採取するとともに、9カ所で予察的な地質調査を行なうことができた。また、採取した岩石試料からジルコンを分離し、それらのU-Pb年代を約50試料測定した。以下にその結果をまとめる。 (1)39.2億年前のNanok片麻岩、38.7億年前のUivak片麻岩や表成岩などの太古代最初期の岩石の分布を明らかにする為に地質調査を行ない、約1200の岩石試料を採取した。 (2)これまで、表成岩帯内部の地質について詳しく研究されてこなかったが、表成岩帯には特徴的な層序が存在し、下位から超塩基性岩→塩基性岩→縞状鉄鉱層(BIF)/chert・砕屑岩の順で出現する。その層序は海洋プレート層序またはオフィオライト層序に似ている。また、最古のBIFや炭酸塩岩を発見した。これらの化学沈殿岩は当時の表層環境解読に有用であるとともに、海洋の存在を示す最古の直接的な証拠である。 (3)表成岩帯が複数の年代の片麻岩に切られている。特にUivakI片麻岩にも切られているものが存在することから初期太古代に形成されたと考えられ、世界最古の表成岩であると考えられる。今後、さらに年代データを増やすことによって、Nanok片麻岩に切られた表成岩を発見する事が期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、カナダ北東部ラブラドル地方で、7~8月の約一月の間、延べ7人で地質調査を行なった。この地域は、7~8月でも雪が降り、暴風雪になることもあるが、今夏の調査では特に前半は天気に恵まれ、順調に調査をすることができ、約1200試料の岩石を採取することができた。この点は当初予定以上の成果と言える。しかし、最後の一週間は悪天候となり、岩石試料の到着が遅れた。その為、国外に依頼した岩石試料の薄片作成が完了せず、顕微鏡観察が遅れた。しかし、繰り越し申請を行ない、翌年度の調査までには薄片観察を行うことができた。また、ジルコンの年代分析に多くの時間を費やし、当初予定を遥かに上回り、50試料以上の年代測定を完了した。以上、総合すると当初以上に進展していると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
2012年度は今年度の調査と年代測定の結果を考慮し、重点的に地質調査を行なう所を選定し、1/5000の詳細な地質図を作成する。特に、年代測定の結果、39.2億年のNanok片麻岩を発見した地域や縞状鉄鉱層や炭酸塩岩分布域の地質調査を重点的に行なう。地質調査の手配に関しては、昨年度の実績を活かし、現地法人と契約を結ぶことにより円滑に進める。 2011年度に中型岩石カッターを新規に購入し、容易に岩石スラブを作成できるようになったので、詳細なスラブ観察と薄片観察とを組み合わせ、調査前に岩石試料の一次記載を行なう。また、ジルコン分離を円滑に行い大量の試料の年代測定を可能にするために、分離設備を充実させる。
|