研究課題/領域番号 |
23254001
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研究種目 |
基盤研究(A)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
亀井 宏行 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (60143658)
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研究分担者 |
渡邊 眞紀子 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (10175119)
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キーワード | 土壌分析 / 年代測定 / 衛星画像 / デジタル標高モデル / 合成開口レーダ / 物理探査 / エジプト / オアシス |
研究概要 |
1.前年度までに採取したエジプト・ハルガオアシス,アル・ザヤーン神殿周囲の砂試料と乾燥地の段丘堆積物試料(イラン西部)について加速器14C年代測定を実施したところ,18ka~4kaの年代値を得た。乾燥地域の段丘地形の堆積物(砂・粘土)試料に含まれる少量の有機態炭素を用いることにより,後氷期の環境変化を推定する際の年代軸を設定することができることが示された。 2.日本の陸域観測衛星(ALOS)のPRISMデータを用いてハルガオアシスのDEMを作成し,地形環境の解析に着手した。もともと沙漠域ではDEM作成が困難であるとされていたが,アル・ザヤ-ン神殿を含む地域で作成したDEMと,1930年代の地形図,我々が実施したGPS測量結果とを比較したところ,等高線間隔5m程度の精度ではDEMが作成できることがわかった。 3.ALOSの合成開口レーダ(PALSAR)データを用いた沙漠地域の土壌水分環境の解析に着手した。 4.掘削が困難な条件下にある地域での土壌・表層地質の性状の観察を可能にする,超小型CCDカメラを用いた地層観察装置の開発を行った。 5.エジプト国立宇宙地球物理学研究所(NRIAG)と共同で,エジプト・ハルガオアシスのアル・ザヤーン神殿周囲の地層構造を推定するための物理探査を実施した。その結果,地下の層位は,アル・ザヤーン神殿の水源域と想定される西側の丘陵ゲベル・シーワから,神殿の東側に向かう傾斜をもっていることが判明した。今回は50m間隔という粗い測定であったため,断層や局所的な帯水層などの発見には至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度はエジプト革命の影響で全く現地調査が実施できなかったが,これまでに採取した沙漠域での砂や土壌の炭素14年代測定を試みたところ,乾燥地域の砂や土壌といった炭素含有が非常に少ない試料なので年代特定は難しいであろうという予想に反して,良好な結果が得られ,この地域の年代軸特定が可能となったという大きな成果が得られた。 これまで衛星画像からの沙漠域でのデジタル標高モデル(DEM)作成は困難であると思われていたが,ALOSのPRISM画像からのDEM作成に成功したことは,今後詳細地形図の入手困難な沙漠域の調査におおいに貢献できる。 エジプト国立宇宙地球物理学研究所(NRIAG)と共同で平成24年度に地下構造推定のための物理探査を実施できたことは,この地域に我々日本人が入ることが難しい事態になっても現地調査が継続できる体制が整えられたということで,今後の研究の進行への障害が少なくなった。
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今後の研究の推進方策 |
NRIAGとの共同研究体制が確立でき,現地調査の継続が可能となったので,安全を確保した上で,現地での地下構造推定,土壌サンプル採取を進めていく。 分析手法については,年代測定および土壌菌核分析,カルサイト分析に集中し,乾燥化という環境変動の様子を明らかにする。 引き続き,衛星画像解析も併用し,現地調査の効率化を図る。
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