研究課題/領域番号 |
23254001
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
亀井 宏行 東京工業大学, 博物館, 教授 (60143658)
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研究分担者 |
渡邊 眞紀子 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (10175119)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ハルガオアシス / 砂分析 / 磁性体球状粒子 / 古環境 / ランドサット / 水資源開発 / アル・ザヤーン神殿 |
研究実績の概要 |
エジプト西方砂漠ハルガオアシスの砂堆積断面から検出した直径0.25-0.5㎜球状磁性体粒子の特徴付けを粒度分析、光学顕微鏡観察、走査型電子顕微鏡観察、蛍光X線元素分析、微小部X線回折分析により行った。砂断面のC14年代測定値、磁性体粒子の鉱物相と色別の検出密度の鉛直分布等から古環境を推定した結果、ハルガではエジプト初期王朝の成立に向かう7,800-5,500yBPの約2500年間は湿潤から乾燥に向かっており、この間に乾湿の繰り返しが2周期存在すると考えられた。 内陸の砂堆積層と日本の海浜砂の堆積層の比較を行い、砂堆積層から検出される球状粒子の特性についても比較検討した。国内の海岸表層砂からは黒色球状体(goethite)が検出された以外は特徴的な磁性体球状粒子は検出されなかった。 1984~2013年のLANDSAT TMデータを用いて西方沙漠における近年の土地利用変化の動向と特徴を抽出した。SRTM(Shuttle Radar Topography Mission)画像から作成した標高図をもとに西方沙漠の地形的特徴を明らかにした上で、古代より独自の水資源開発と農業利用を続けてきたハルガをとりまく近年の大規模な水資源・農地開発が将来ハルガに及ぼす影響を指摘した。 エジプト国立宇宙地球物理学研究所に委託し、ハルガのアル・ザヤーン神殿周辺の畑遺構と断層涵養帯付近の物理探査による層位情報の取得と砂堆積資料の採取を実施した。 メトロポリタン美術館が20世紀初頭に行ったハルガでの発掘調査記録を精査し、アル・ザヤーン神殿の当時の様子、現在に至るまでの経緯について検証した。同館で開催された『ハルガオアシス展』を視察し、同様の作業を行った。同館、ブルックリン美術館、ボストン美術館にて、アル・ザヤーン神殿と同時代のエジプト資料を照査し、今後のアル・ザヤーン神殿遺跡研究への可能性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は研究者による現地調査が実施できなかったが、平成24年12月に採取された砂堆積層の試料を対象として各種分析を進めた結果、磁性体球状粒子を特徴づけることによって、沙漠地域の乾湿の変動や土壌化の程度を推定する基礎的な知見を得ることが出来た。この手法をもとに、ハルガオアシスでの乾燥化、砂漠化の過程がどのようなものであったか、土地被覆や水資源に関する空間情報と合わせて考察を進めていく見通しが得られたため。 また,繰越をした平成27年3月には,エジプト国立宇宙地球物理学研究所(NRIAG)に業務委託をして,物理探査を行うとともに,新たな砂堆積物を取得できたため。
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今後の研究の推進方策 |
エジプト国立宇宙地球物理学研究所に委託し、古代ローマ井戸の水源となっていると考えられる断層涵養帯付近と時代不詳の畑遺構において採取された砂堆積試料の分析を進める。 現地情勢をみながら、可能であれば現地調査を行い,試料採取地で手掘りによる掘削を試み、砂堆積層の断面形態の観察を行う。 対象とする砂堆積層の断面には自然環境変動と人の営みによる自然の応答の両者が含まれると予想される。この2つのシグナルを分離・検出することが可能か、断面間の対比が可能か、また検出されるシグナルの精度(時間分解能)を決める年代軸をどのように与えるか、などを検討していく必要がある。
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