研究課題/領域番号 |
23254004
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
安原 一哉 茨城大学, 地球変動適応科学研究機関, 産学官連携研究員 (20069826)
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研究分担者 |
村上 哲 茨城大学, 工学部, 准教授 (10261744)
三村 信男 茨城大学, 広域水圏環境科学教育研究センター, 教授 (60133089)
武若 聡 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 教授 (80202167)
桑原 祐史 茨城大学, 広域水圏環境科学教育研究センター, 准教授 (80272110)
小峯 秀雄 茨城大学, 工学部, 教授 (90334010)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | モニタリングシステム / 気候変動 / 地形変化 / 適応策 / 数値解析 / 海岸侵食 |
研究概要 |
・海岸班はHai Hau海岸の堤防の崩壊メカニズムとリスク評価を行った。当該海岸の堤防の背後斜面には防護工がないため、高波による越波による背後斜面の破壊が主要な崩壊メカニズムと考えた。そのため、長期的な海岸侵食、堤防前面の洗掘、海面上昇、高潮が重なった場合の海岸堤防前面の水深増大を予測するモデルを構築した。これに基づき、10年及び50年確率の入射波浪を用いて越波量を推定し、堤防崩壊のリスクを評価した。その結果、現在の3世代目の堤防においても崩壊リスクは低くないことが分かった。その低減のための対策として、前面の消波工の設置やマングローブの植林による入射波の制御が有効であることを示した。 ・堤防・基礎地盤班は、まず、Hai Hau海岸における裏法面の洗掘による堤防の不安定化の数値解析的検討を行なった。その結果、堤防のみではなく軟弱な堆積地盤も含めたすべり破壊を生じる可能性があることが分かった。また、裏法面の侵食の進行に伴い支持力が約50%まで減少することが分った。次に、ベトナム国内の土質情報に基づき,堤防の浸透破壊特性・侵食特性と土質材料の粒度特性と締固め状況との関係を実験的に明らかにした結果をデータベース化し、これに基づき,ベトナムの紅河流域の浸透破壊・侵食に対する脆弱性を評価し,締固めの程度が不十分と判断される箇所を定量的に明確にした。また,適応策として,浸透破壊・侵食に対する有効な耐性を保持するに必要な締固め度を,各箇所毎に提示した。 ・空間情報班は衛星画像を用いた被覆変化の分析および河川氾濫域の把握のためのシミュレーションを実施した。その結果、塩水化と被覆変遷との関係を詳細に分析して行く際には時系列分析を深化させる必要があり、新たに土地利用図を準備し、補正と分析方法を検討した。最後に、海岸・地盤工学のモニタリング情報を統合化する統合型モニタリング構想のフローを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011年度と2012年度の成果を踏まえた研究の達成度は以下の様に要約される。 ・<海岸班>は、2011年には、広域的な波浪の設定と海岸線変化モデルを組み合わせて、Hai Hau海岸全体の長期的変化(50年スケール)を再現するモデルを構築した。2012年には、長期的海岸線変化の上に局所的な洗掘を推定するモデルを構築し、それを用いて海岸堤防の崩壊リスクを評価するモ デルを構築した。本研究が目的とした、観測・予測システムをほぼ完成させたことから、達成度は90% であると判断する。 ・一方、<堤防・基礎地盤班>は裏法面の洗掘による堤防の不安定化について数値解析的に検討を行っているが、波浪の影響を考慮できていないことなど、を考慮すると50% 程度の達成度である。したがって、最終年度は、格段の努力を要すると考える。これに対し、土質材料に関する浸透破壊特性・侵食特性の調査については、現象に関するデータベースを構築し,対象となる土質材料の締固め程度の観点から脆弱性を評価できたという点で,およそ,80%の達成度と考える。なお、ハノイ科学大学に委託している堤防内の間隙水圧の測定は順調に実施されており、堤防の侵食や破堤のメカニズム解明に資するデータが蓄積されている。 ・最後に、<空間情報班>では、被覆変化分析の深化に関する方法論は整理できたので、達成度は70% 程度と考える。また、研究を総括する統合型モニタリングフローについてはモニタリング項目がすべて出揃っていないため、60% としたい。したがって、最終年度では、研究代表者と研究分担者が緊密に連携を行って、格段の努力を傾倒して研究の完成を目指す所存である。 以上を総合して、本研究は2011年度と2012年度を総合すると、全体として、初期の目標の60%~70%は達成されており、順調に推移していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
2011年度と2012年度の成果を踏まえた今後の研究の推進方策は以下の様に要約される。 <海岸班>①まず、堤防の崩壊のメカニズムの解明のために、海岸班と堤防・基礎地盤班の成果との結合を検討する。また、適応策の有効性の検討を行い、ベトナムの海岸線維持に必要な対応策の提案を行う。②侵食の進行が周辺に比較して大きくなると予想される場所があるかどうかを検討し,近い将来の適応策を考えるための情報を提供する。③紅河デルタ,ハイハウ海岸の発達過程を調べ,現在のデルタの縮小過程と併せて解析する。 <堤防・基礎地盤班>①堤体の不安定性解析においては、波浪など他の外力を考慮してより詳細な数値解析による検討を行い、解析手法の妥当性を検証する。②堤防の侵食に伴う損傷や崩壊に対しては、堤体材料の締固め度の改善の観点からの適応策だけではなく,土質改良や補強技術などを複合させて,より有効と考えられる適応策を提案し,各種実験により,その実用性を明らかにする。 <空間情報班>これまでに入手した空間情報の分析を進めるとともに、新たに現地にセンサを投入したモニタリングを進め、統合型モニタリングシステム提案の基礎とする。 なお、ハノイ科学大学に委託している堤防内の間隙水圧の測定については、2011年度2012年度とも順調に行われているが、最終年度に一層の強化を行って、堤防の侵食や破堤のメカニズムのさらなる解明に資する精度の高いデータを蓄積することによって、気候変動に起因する沿岸域のモニタリングシステムの構築に貢献させたいと考えている。
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