研究課題/領域番号 |
23254005
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
後藤 春彦 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70170462)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | シティ・リージョン / ナレッジ・シティ / スペーシャル・プランニング / 社会空間政策 |
研究概要 |
昨年度に引き続き、欧州各地域における「シティ・リージョン(CR)」を単位とする社会空間戦略と、その重要主題としての「ナレッジ・シティ(KC)」に関する概念整理を行った。その際、昨年度に行った予備現地調査および文献資料調査の結果をふまえ、CRを単位とする社会空間戦略の円滑な運用のためには、「セクター間の協働」「既存の行政枠組みを越えた協働」を可能とする枠組みの存在が特に重要であるとの仮説のもと、研究を進めた。 「セクター間の協働」に関しては、スペイン・ドイツを対象として、CR単位での複数セクター協働の事例を調査した。このうち特にドイツでは、政府による協働推進の枠組みは一応存在するものの、具体的な実施方法については地域に一任されており、事例によって手法・規模・予算等が極めて多様であった。そこで、こうした地域一任型の広域協働の枠組みに関してより詳細に把握するために、ドイツから都市計画理論家ならびに、セクター間協働において顕著な成果を上げている「ラインネッカー大都市圏」の計画部門代表者を招聘して、わが国の専門家・政策担当者との意見交換を実施し、国内での応用可能性を検討した。 「既存の行政枠組みを越えた協働」に関しては、フランスのトゥールーズ都市圏を対象として、計画単位再編の動きとその経緯、課題の把握などを行った。昨年度の調査では既存自治体へのヒアリングを行い、その過程で計画単位再編に係る法整備の動きを把握したが、それをうけて本年度の追加調査では、基礎自治体やPAYS(広域市町村組合)運営組織へのヒアリングを行った。州レベル、県レベル、自治体レベルのそれぞれの既存の自治単位の他に、PAYSや大都市圏といった新たな計画単位の設定や、SCOTと呼ばれる広域圏計画手法の確立によって、計画単位を再編していく取り組みが見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外調査は概ね予定通り実施し、各国のスペーシャル・プランニングの事例に関しては、制度的枠組や運用実態を含めて詳細に整理されつつある。また現地専門家を招いての連続セミナーに関しては、これまでの研究蓄積をもとに招聘すべき専門家を選定し実施した。 一方、これまでに収集した取り組み事例のなかには、計画の「実効性」に相当のばらつきがみられたことから、従来の研究者・プランナー中心の聞き取り調査に加えて、自治体職員・NPO関係者・政治家などより幅広い対象への聞き取り調査によって、「実効性」が生じる仕組みの把握が必要であると考えた。そこで、当初予定していた、わが国の具体的な都市圏を対象に応用性の評価・検討を行うことについては、より内実あるものとするため次年度の実施とし、必要な追加調査を行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの文献調査および現地調査の結果をもとに、シティ・リージョン(CR)を単位とする空間計画に関する欧州各地域の取り組みを整理し、その中でも計画の「実効性」の面で顕著な成果をあげつつある地域を選定して、追加の現地調査を行う。その際、これまで聞き取りの主な対象としていた研究者・プランナーに加えて、自治体職員・政治家を含めた幅広い対象に聞き取り調査を行う。その中で、重要主題として近年台頭しているナレッジ・シティ (KC)戦略の実践手法に関しては、特に重点的に事例を収集・分析する。そのうえで、わが国の具体的な都市圏を対象にKC戦略手法の応用性の評価・検討を行う。 また、CRとKCをめぐる計画理論に関しては、昨年度にひきつづき資料の翻訳・整理・分析を進める。また、そこから得られた知見を基軸として、3カ年間にわたるCRとKCの諸事例を整理するための共通の枠組みを設定し、事例ごとの特徴を分析する。その上で、わが国における新たな制度的枠組みの導入の可能性を検討して、高流動性社会を前提とした計画理論の構築を行う。
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