研究課題
オホーツク海サハリン北東沖は表層ガスハイドレートの密集生成域であることが示されているが、ハイドレート分布の南限については、調査データが無く不明であった。本研究は、「調査の空白域」でありながらメタン湧水を示す観測データが(音響探査によるメタンフレア観測および海底ドレッジによるカーボネート採取により)いくつか得られているサハリン南東沖テルペニヤリッジ周辺において本格的に物理探査および海底コア採取・解析を行い、メタン湧水の発達とガスハイドレートの生成環境を解明しようとするものである。また、得られたデータをサハリン北東沖と比較・総合することによって、サハリン東沖の大陸斜面に広く産する表層ハイドレートの産状と生成環境を明らかにすることを目指している。本年度(第2年度)は、昨年度に続いてロシア調査船ラブレンティエフ号を用いたサハリン沖海洋物理探査とCTD探査および堆積物コア採取を実施した(8月7日~30日)。ロシアおよび韓国の国際共同機関と協力して、種々の物理探査(サブボトムプロファイラー探査、音波探査、音響探査等)を行って海底深部からのガス・水供給路に関する情報と海底の地形データを収集・解析した。特に音響探査からは、メタンシープの直接的証拠となるフレア(プルーム)が、19箇所(水深150~2200mの範囲)において観測された。昨年度および本年度観測されたフレア位置を重視して8本の表層コアが採取された。水深1050mのフレア位置で採取されたコアからはガスハイドレートが発見され、サハリン南東沖におけるハイドレートの生成が証明された。来年度は調査の最終段階として、候補サイトにおけるコア掘削を行い、表層ハイドレートを採取・解析してサハリン南東沖ハイドレートの特性および生成メカニズムを明らかにすることを目指す。
2: おおむね順調に進展している
海底のメタンシープについて、基部の水深が300 mを超えるフレアが15カ所で観測されており、そのうちの1箇所で採取されたコアからはガスハイドレートが発見されている。他の14箇所についても表層ハイドレート生成が有望視できる状況である。また、採取されたガス・水・堆積物サンプルの測定・解析も順調に進められている。
今後の推進方策については、ロシア科学アカデミー極東支部V.I.イリチェフ太平洋海洋学研究所(ロシア・ウラジオストク市)、ロシア科学アカデミーP.P.シルショフ海洋学研究所(ロシア・モスクワ市)および韓国極地研究所(韓国・インチョン市)との国際共同研究を基本として調査研究を進めることに変更は無い。
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Geo-Marine Letters
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