研究課題/領域番号 |
23255001
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研究種目 |
基盤研究(A)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
高橋 晃周 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (40413918)
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研究分担者 |
飯田 高大 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (90455189)
佐藤 克文 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (50300695)
森 貴久 帝京科学大学, 生命環境学部, 准教授 (90367516)
坂本 健太郎 北海道大学, 獣医学研究科, 講師 (80374627)
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キーワード | 海洋生態 / 環境変動 / 動物行動 / 極域科学 / データロガー / バイオロギング |
研究概要 |
本研究の目的は、海洋の中深層に潜水する大型動物・ゾウアザラシ類の捕食行動を新規手法によって数ヶ月に渡って記録し捕食行動の時空間変動に関するデータセットを得ることである。さらに、捕食行動の時空間変動と海洋環境・生物一次生産との関係を解析し、海洋表層の環境変動に対する中深層性大型捕食動物の生態応答を解明することを目的としている。研究初年度にあたる本年度は、調査に使用する機器の開発と野外調査を実施し、また調査結果の予備的な解析をおこなった。まず、機器開発については、従来の加速度記録計に加速度データの効率的な要約をおこなうアルゴリズムを組み込み、数ヶ月間の加速度シグナルを記録する新規記録計の開発をおこなった。また画像記録についても、深度によるトリガーを組み込んで特定の深度帯のみで撮影することにより、約1ヶ月間の記録を得ることが可能となった。次にこれらの機器を米国カリフォルニア州に生息するキタゾウアザラシに取り付ける野外調査を実施した。長期加速度記録計・画像記録計の装着・回収作業をおこなった結果、6個体から、約2.5ヶ月間の採餌回遊中の捕食行動の連続記録を得ることができた。その結果、ゾウアザラシは、回遊中の約7-9割の潜水において採餌をおこなうという高い捕食成功率をもつことが初めて明らかになった。捕食成功率は500-700mの深度で最大となっており、中深層の餌生物がこの深度帯に集中して分布していることが示唆された。またゾウアザラシに取り付けた画像記録計によって中深層性の魚であるハダカイワシ類が撮影された。ゾウアザラシ類の餌生物は従来イカ類が中心であると推定されてきたが、本研究の結果、小型ではあるが中深層において膨大な生物量をもつとされるハダカイワシ類がゾウアザラシの高い捕食成功率を支えていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の当初の計画通り、機器開発を行って野外調査を実施することができたため。予備的な解析を行い、その成果を学会発表できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度開発に成功した長期間記録可能な加速度・画像記録計を、今後さらに多数個体に装着しゾウアザラシの捕食行動の時空間変動を明らかにしていく。また、来年度、ゾウアザラシの採餌海域で観測船による調査を実施する機会が得られたため、来年度の研究分担者を追加し、観測船からネットやカメラなどでゾウアザラシの中深層性餌生物の現地調査を実施する計画を加える。
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