研究課題/領域番号 |
23255008
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
宮川 修一 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (60115425)
|
研究分担者 |
土田 浩治 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (00252122)
齋藤 暖生 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (10450214)
野中 健一 立教大学, 文学部, 教授 (20241284)
渡辺 一生 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (30533012)
竹中 千里 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (40240808)
川窪 伸光 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (60204690)
小坂 康之 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 助教 (70444487)
舟橋 和夫 龍谷大学, 社会学部, 教授 (80081173)
竹田 晋也 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (90212026)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 環境調和型農林水産 / 環境分析 / 植物 / 生態学 / 林学 |
研究実績の概要 |
空中写真によって調査した東北タイの産米林の樹木密度は,立地条件の異なる村での間の違いが1970年代には著しかったものの現在では差異がほとんどなくなっており,その原因には商品樹種の増加と在来樹種の減少,稲作近代化のための区画拡大の程度が関係していることがわかった. インドのデカン高原にある産米林では,ナツメが主要樹種であり,また現金収入源のラックカイガラムシの生産に用いられるという高度な産米林機能が確認された. シロアリ塚の人為損壊に対する回復程度は水田や森林内の塚よりも集落内の塚の回復程度が大きいこと,またこの作用はシロアリの種類で差があることにより資源としての塚の供給量制御に結びつく可能性が高まった.水田の中のシロアリ塚では塚土壌の肥沃性により周囲のイネは草丈が大きくなるものの,化学肥料投入下の栽培では倒伏の発生によって収量増加は見られず、その効果を発揮できていなかった.水田区画整理や野菜肥料目的で塚が除去された後の水田では,塚跡の中心部に極めて生育収量の良い部分と,その周囲にほとんどイネが育たない部分とが二重円状に形成されおり,土壌の成分が異なることが明らかとなった.これはシロアリ活動の作物生産に及ぼす負の側面であり,生成機構を知る必要がある. ビエンチャン平野の多くの塚を造成しているシロアリはMacrotermes gilvusであることが判別された.この種を含むキノコシロアリが作る塚に発生するシロアリタケの菌種子はタイよりもラオスで多く流通しており,人工栽培化が進んでいることが明らかとなった. 東北タイの農村におけるホームガーデンでは数県にシリアリ塚土を用いた栽培が広がっていることがわかった.一方では塚資源節約のため塚の土を利用しない栽培や連作の可能性を試す農家も増えている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
産米林の樹木密度と樹種が農家の生業活動の歴史的な変化と緊密に関連していることが明確になってきたこと,産米林機能に昆虫養殖を付加できたこと,農業生産のためのシロアリの塚の除去搬出が生産に負の効果をもたらす現象が発見できたこと,塚の再生力に違いをもたらす要因を特定できる可能性が出てきたこと,成果の一部が国際学会や国際誌で発表できたことは成果であった. 一方ではシロアリ塚と樹木の共生体の生成過程や共生によるシロアリ活動への影響,それがもたらす塚土壌の化学成分の変化など,産米林の複合機能の解明と応用技術化に必要な情報収集と分析が不充分である.また農村における塚の需給バランスや農村社会での意味についても広域的な情報収集とそれによる分析が不十分である.
|
今後の研究の推進方策 |
1.産米林樹木の地域間差,歴史的変遷の要因をさらに具体的に明らかにするための分析を行う. 2.シロアリと塚に関する資源利用の実態,シロアリ塚需要と作物栽培との定量的関係,塚(跡地を含む)の存在と周囲の作物への影響,農村の都市化や稲作の近代化と産米林ならびにシロアリ塚の変容との関係について実地調査を行う. 3.シロアリ塚の形成過程に及ぼす環境条件ならびにシロアリの生態との関係を把握するため実地調査を行う. 4.これらの情報を総合的に検討する研究会を実施する.
|