研究課題
永久凍土南限域ではカラマツ林の存在が湿原・永久凍土の安定性と関連し、その維持管理がCO2の放出を含む地球温暖化と密接に関連している可能性がある。本研究では中国の南開大学・東北林業大学・黒龍江省林業研究所の研究者と共同で大興安嶺および小興安嶺の森林(カラマツ)-湿原複合生態系に調査地を設定し、水・炭素を中心とする物質循環の観測、北海道のカラマツ林との比較、山火事等の人為影響によるカラマツ林の撹乱が湿原生態系に与える影響、森林回復の技術的課題について検討した。大興安嶺地区では山火事が頻発し、湿原あるいは周辺のカラマツ林が焼失することによって湿原が不安定化し、地下部の泥炭層や永久凍土が融解して二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)などの地球温暖化ガスが大気へ放出される。メタンは二酸化炭素の約25倍の温室効果を持つが、林床にあるリタ-層の好気的環境では森林はメタンの吸収源となる。北大FACE実験からは、2040年頃のレベルと想定される高CO2(500 ppm)に設定された林床におけるメタンの吸収量は、対照区(380~390 ppm)の半分程度になることが解った。高CO2下では樹木は葉面の気孔を閉じ気味にするため、樹木からの蒸散が減る。また、上層木の葉が繁茂し林床へ届く光量も減るため地面からの蒸発も減少し、リターは湿気を帯びた状態になる。これらの変化によって林床が嫌気条件になることが原因の一つとして考えられた。さらに同じ土壌含水率でもFACEの方がメタン吸収は低下していた。これらのことから、今後CO2濃度が上昇し続けると強力な温室効果ガスであるメタンの森林からの放出量が増加すると考えられた。また、本プロジェクトに関連した研究者による日中共同セミナーを北海道大学で開催し、人為影響による大興安嶺地区の炭素循環変化の現状や森林回復技術について意見交換し、課題のとりまとめをおこなった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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