研究課題/領域番号 |
23255011
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鎌田 直人 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (90303255)
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研究分担者 |
楠本 大 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (80540608)
後藤 秀章 独立行政法人森林総合研究所, 九州支所, 主任研究員 (10353682)
升屋 勇人 独立行政法人森林総合研究所, 森林微生物研究領域, 主任研究員 (70391183)
平尾 聡秀 東京大学, 農学生命科学研究科, 講師 (90598210)
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キーワード | 養菌性キクイムシ / 樹木萎凋病 / ナラ枯れ / Raffaelea quercivora / ブナ科 |
研究概要 |
パプアニューギニア・タイにおいて、養菌性キクイムシが媒介する樹木萎凋病のリスク評価に関する、調査・実験を行った。パプアニューギニアにおいては、マダンのパプアニューギニア昆虫研究所を拠点として、East Highland州のゴロカ(Gahavisuka山)とチンブ(Mu)で調査・実験を行った。標高1800m~2400mに位置するLithocarpus属とCastanopsis属が多く混交する森林において、倒木、落下した太い枝に寄生する養菌性キクイムシの採集を行った。また、上記の2属の樹木を現地で購入し、伐倒・枝落とし、玉切りを行った。幹と枝を1ヶ月林内の林床に放置したのち、幹・太枝(直径2cm以上)・細枝(直径2cm未満)にわけて、約半分については網袋にいれて放置し、羽化脱出してくる養菌性キクイムシを捕獲した。残りの半分については、割材することによって直接養菌性キクイムシを採集した。タイ国では、北西部のチェンマイ周辺、バンコク東方のライスワン周辺の果樹園において、農家が選定を行ったマンゴー・ライチ・ロンガン・アボカドの太枝をもらい受け、約1ヶ月果樹園内の地面に放置した後、割材することによって、養菌性キクイムシを採集した。 また、日本でナラ枯れ被害の病原菌であるRaffaelea quercivoraについて、過去2回の科学研究費補助金研究において、タイ・インドネシア・ベトナム・台湾において採集してきた系統を日本の系統とともに、コナラとミズナラに接種した。その結果、台湾とベトナムから採集した菌の中に、病原力の強い系統が見つかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
諸外国によって、健全な樹木に加害する可能性の高いキクイムシを採集しており、おおむね順調に進んでいる。また、本科研で購入した5連式恒温槽を使い、日本のナラ枯れの病原菌であるナラ菌(Raffaelea quercivora)について、過去に科研で採集した外国産のナラ菌と日本のナラ菌を使った接種実験を進めており、病原力が日本の系統に劣らないナラ菌の系統が外国にも存在することが明らかとなるなど、ほぼ当初の計画通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
パプアニューギニアでは、設置したベイト丸太・太枝・細枝から羽化する養菌性キクイムシの採集を続ける。また、かつてパプアニューギニアからSchdelがカシノナガキクイムシを記録しているが、本年度の調査では採集することができなかったので、標高や場所を変えて採集を試みるほか、パプアニューギニア森林研究所、ウィーン動物博物館、スミソニアン博物館、オーストラリアCSIROなどの標本を検討する。 タイでは、健全な樹木に攻撃する可能性の高い種を採集する。 アメリカでは、フロリダ大学とはローレル萎凋病に関係した養菌性キクイムシに関する共同研究を進める。 Raffaelea quercivoraについては、外国産の系統を含むいくつかの系統を、コナラ属の落葉性の樹種と常緑性の樹種に接種して、系統間の病原力の違いと、樹種間および落葉-常緑樹間の感受性の違いを検討する。ナラ枯れによる死亡率がミズナラで高い原因が菌に対する感受性によって決まっているのかどうかを検討する。
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