研究課題/領域番号 |
23255015
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
長谷川 信美 宮崎大学, 農学部, 教授 (50281217)
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研究分担者 |
西脇 亜也 宮崎大学, 農学部, 教授 (60228244)
井戸田 幸子 宮崎大学, 農学部, 助教 (40325733)
平田 昌彦 宮崎大学, 農学部, 教授 (20156673)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | 生態系保全 / 草食家畜 / 放牧システム / 高山草原 / 国際研究者交流 / 中国 : インド : ドイツ |
研究概要 |
1. チベット高原における放牧動物種と放牧方式が高山草原生態系に及ぼす影響:8月に玉樹県国営牧場において、ヤク・ヒツジ24時間行動観察、GPS行動位置記録、全糞採取、採食行動(バイト数・歩数)観察,採食反芻行動記録を行った。コドラート法とライントランセクト法により、植生調査を行った。牧畜農家10戸で家族構成、家畜構成と頭数、放牧面積、放牧方式、年間作業体系などの聞き取り調査を行った。 2. クチグロナキウサギの行動生態と草原生態系物質循環に及ぼす影響:クチグロナキウサギ巣穴入口に自動撮影装置を設置し、行動記録を行い、行動パターンの解析を行い、活動時間帯を明らかにした。巣穴形状調査を行い、掘り出す土壌量の推定を行った。巣穴密度の異なる10区域で植生調査と土壌調査を行った。 中国調査で採取した糞、植物と土壌サンプルは農水大臣輸入許可を得て持ち帰り、糞と土壌の成分分析を行った。植物成分は今後分析予定である。 3.インド国ジャンム・カシミール州における遊牧が高山草原生態系に及ぼす影響:ダシガン国立公園ヤギ・ヒツジ放牧地で植生調査を行った。遊牧経路のGPS記録と植生調査をムガールロード沿いで行い、移動経路を明らかにした。 4.チベット―トランスヒマラヤ高山草原植生の時空的変動:同位体元素(13C・18O)測定のため、ヤク尾毛、飲水サンプルを玉樹県国営牧場で採取した。また、インド国ジャンム・カシミール州ラダックでのヤク尾毛と飲水サンプル採取を依頼した。分析はミュンヘン工科大学H. Schnyder博士の協力により行う。植生調査結果に基づき,MODIS衛星画像解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. チベット高原南部における放牧動物種と放牧方式が高山草原生態系に及ぼす影響:中国調査地は、地震で破壊された道路修復が進んでおらず、車が通行できないために、移牧地まで行くことができなかった。また、4月に設置したプロテクトケージが子供のいたずらにより設置位置から動かされており、草地生産量の調査はできなかった。ヤクの糞は全量採取したが、ヒツジの糞の採取は正確にできなかった。 2.インド国ジャンム・カシミール州における遊牧が高山草原生態系に及ぼす影響:インドは異常気象のため8月末までの雨季が9月にまでずれ込んで豪雨となり、川が増水して危険な状態となったため、ダシガン国立公園の予定の半分の区域の調査を終えた段階で下山した。 3.チベット―トランスヒマラヤ高山草原植生の時空的変動:2011年にALOSが機能停止したために、調査区域の現在の衛星画像解析が行えなくなった。インド調査地のMODISによる解析を進めている。中国調査地は今後解析を進める。
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今後の研究の推進方策 |
1. チベット高原南部における放牧動物種と放牧方式が高山草原生態系に及ぼす影響:玉樹国営牧場調査地で、ヤクとヒツジが生態系物質循環へ及ぼす影響について、行動観察、採食行動観察、全糞採取を行い、糞成分分析を行って比較調査する。ヒツジに糞袋を装着して、排糞量の正確な推定を行う計画である。また、定置放牧地と移牧地での植生調査と経営調査を行う。海外共同研究者にプロテクトケージの4月設置と監視を依頼する。 2. クチグロナキウサギの行動生態と草原生態系物質循環に及ぼす影響:クチグロナキウサギの行動生態調査を引き続き行う。巣穴内部調査をおこなう。また、糞を採取して成分分析を行う。 3. インド国ジャンム・カシミール州における遊牧が高山草原生態系に及ぼす影響:インドでは、ツォ・カル湖周域の遊牧民チャンパ族の移動経路にプロテクトケージを5月初旬に設置し、8月下旬に植生調査を行う。移動経路調査のためGPSを遊牧民に5月初旬に渡し8月末に受け取る。 4.チベット―トランスヒマラヤ高山草原植生の時空的変動:中国調査地の衛星画像解析を進める。ヤクの尾毛と飲水を今年度も採取して同位体元素分析を行う。
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