研究課題/領域番号 |
23256001
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 芳嗣 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00173922)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リーシュマニア症 |
研究概要 |
リーシュマニア症の伝播機構、発生機構を多角的比較研究により解明することを目的として、海外共同研究者協力のもと本年度も引き続き現地調査を行った。1)ヒト皮膚型リーシュマニア症が蔓延しているトルコのAdana地域において、92頭のイヌを対象にリーシュマニア原虫分離またはLAMP法による感染率の推定を行った結果、感染率は17.4%であり、この地域においてイヌが重要な保虫宿主であることを示唆した。2)ヒト内臓型リーシュマニア症およびイヌリーシュマニア症が蔓延しているトルコのAydinにおいて媒介昆虫調査を行い、Phlebotomus tobbi の生態学的優先度を確認した。さらに、この地域に生息する5種Phlebotomus属サシチョウバエに対する長期残留型蚊帳の効果をWHO基準に基づき試験し、その有用性を示唆した。3)媒介昆虫種の明らかになっていないバングラデシュにおける調査では、P. argentipesの生態学的優先度を確認し、P. argentipesが媒介種として推測された。 実験動物における病態形成機序を病理組織学的、免疫学的および免疫組織学的に解析を引き続き行った。マウス実験的内臓型リーシュマニア症(visceral leishmaniasis, VL)において、Th1が抵抗性に、Th2が感受性に関与していることを明らかにするために、BALB/c、C3HへのL. donovani感染実験を行った。病理学的解析および免疫学的解析(感染12週マウス由来脾細胞を原虫粗抗原で刺激した際のIFN-γおよびIL-4産生量を測定)した結果、マウス実験的VLにおいても感染に対する抵抗性、感受性にTh1、Th2が関与していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リーシュマニア原虫株間の比較検討のため、バングラデシュにおけるヒト内蔵型リーシュマニア症およびPost Kala-azar dermal leishmaniasisの原虫株は分離されたものの、一株の樹立のみで、さらなる株樹立を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の成果をもとに、バングラデシュ、トルコ、モンゴル、中国の地域ごとに海外共同研究者と協力し旧大陸におけるリーシュマニア症の実態調査、媒介昆虫および保虫宿主の現地調査を以下の項目につき継続する。(1)病原虫:特にバングラデシュに焦点をあて、本症が疑われる患者に皮膚または骨髄ニードル・バイオプシーを行い、原虫の検出、原虫分離のための培養を行う。(2)ヒト血清および生検試料:患者発生地域周辺住民の血清、およびリーシュマニア症患者由来生検試料を得る。(3)動物(イヌ等)血清および生検試料:保虫動物の候補動物であるイヌの血清、および動物由来生検、剖検試料を得る。(4)ライトトラップ等を用いて媒介昆虫サシチョウバエの捕獲を行なう。 得られた試料を用い(1)樹立された原虫株についての遺伝子解析および抗原性解析を行い、これら樹立株を用いて、各種実験動物における病態形成機序を組織学的に解析する。(2)ヒト血清を用い、原虫種特異的な抗原を用いた免疫学的探索を行う。生検試料を用い病理組織学的、免疫組織化学的に解析する。(3)保虫宿主より原虫分離および血清疫学的解析を行い伝播サイクルへの関与を推定する。さらに動物の原虫感染率をLAMP法により推定する。 (4)媒介昆虫の同定と遺伝子比較解析を行う。これらの得られた結果を取りまとめ学会発表を行う。 また、実験動物を用いリーシュマニア症の病態形成機序を病理組織学的、免疫学的および免疫組織学的に引き続き解析する。
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