研究課題
「研究の目的」中南米型リーシュマニア症(「リ症」)の医学・生物学の解明及び治療と予防法を検討する。「平成25年度の主な研究実施計画」①エクアドル及びペルーの患者、媒介昆虫、保虫動物等から採取した検体の分子疫学・生物学的手法で解析する。また②アルゼンチンの内臓「リ症」患者検体の遺伝子解析し、流行地の特定と拡大要因を検討する。「主な研究成果」①エクアドル アマゾン地域の流行地(Coca, Orellana県)で同国最初の症例となるLeishmania (Viannia) naiffi 原虫を2名の軍人から分離、遺伝子解析し同定した。また患者所属軍基地の訓練場所で採取したLutzomyia torturaを媒介者と決定した。②エクアドルとペルーの両国でアンデス型「リ症」の媒介者Lutzomyia ayacuchensis に着目し遺伝子解析した結果、Promastigote寄生腸管部位(mid/hind gut)タンパクとの関連で興味ある知見を得た。③ペルーのFTA検体解析でL.(V.) braziliensis とL.(V.) peruensisのHybrid株が検出され、分布の実態を明らかにした。④エクアドル及びペルー各地でげっ歯類を捕獲、rK39による血清診断を実施したが、陽性検体は見出せなかった。⑤皮膚「リ症」の新規治療法として、アンチモン剤とMerthiolateローションによる局所療法は好成績を示し、今後の広範な適用が期待できる。⑥アルゼンチンの内臓「リ症」の病原虫L. (L.) infantumの遺伝子解析に基づき、その由来と分布の拡大を考察した。「研究の意義及び重要性」研究成果は「リ症」の伝播疫学への理解を深め、本症の治療や対策上重要かつ意義深い
1: 当初の計画以上に進展している
本研究課題「中南米型リーシュマニア症の病態生理と分子伝播疫学」採択直後に、研究代表者・橋口はエクアドル国政府招聘教授として同国中央大学医学部生物医学・熱帯医学研究センターに赴任した。このため、エクアドルを中心に中南米地域で30数年にわたって実施してきたリーシュマニア症の継続研究が可能になり、多数の協力研究者や日本人短期派遣共同研究者とともに予想以上の成果をあげることができた。一方、ペルーやアルゼンチンに関しても強力な共同研究者の協力により、患者のFTA検体や媒介サシチョウバエの標本が入手でき、PCRその他の分子解析が可能となった。これらの成果は国際誌や国内外の学会で公表、あるいは公表予定である。なお、研究成果の一部は現地(エクアドル)の新聞(El Comercio)、雑誌(VIZTAZO)、テレビ(TELEVIZTAZO)でも報道され、科研費による研究成果の現地社会貢献及び還元できたことを付記する。
本研究は1982年以来の代表者(橋口)を中心として実施・蓄積されてきた実績の下、相手国研究者との連携による強固な協力体制が確立されている。今後も研究上の相互の信頼関係を重視しつつ調査・研究を遂行する所存である。また、今年度の研究により新たな研究課題も生じてきた。特に①患者と媒介サシチョウバエで検出されたL.(V.) naiffiの分布地特定や罹患率を決定する必要がある。また、②本研究課題で開発・検討されている局所療法は更なるlarge-scale [evaluation] large-scale trialに基づく評価が必要である。さらに、③ペルー国のL.(V.) braziliensis とL.(V.) peruvianaのHybrid原虫や、アルゼンチンの内臓「リ症」病原虫L.(L.) infantum等についても今後の掘り下げた調査・研究が急務である
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 12件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 5件)
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