研究課題/領域番号 |
23256004
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研究種目 |
基盤研究(A)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
服部 俊夫 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (30172935)
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研究分担者 |
平島 光臣 香川大学, 医学部, 教授 (70109700)
仁木 敏朗 香川大学, 医学部, 助教 (40558508)
児玉 栄一 東北大学, 病院, 助教 (50271151)
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キーワード | デング熱 / デング出血熱 / バイオマーカー / オステオポンチン / ガレクチン / プロモーター |
研究概要 |
(要約)Gal-9は炎症の亢進にも抑制にも働きうる両面性の免疫制御因子であり、この因子の血漿申発現量がデングウイルスの感染とデング熱またはデング出血熱発症によってどのように変化するかを特異的なELISAによって調べた。また研究の過程でGal-9を分泌して過剰免疫を抑制するT細胞を見出した。このT細胞は細胞表面にGal-9を発現しており、それを指標に同定・追跡することが可能である。この細胞を簡便に検出するために適当なモノクローナル抗体を選択し、フローサイトメトリー用の蛍光ラベル体を調製した。(成果)マニラのサンラザロ病院のデング熱患者血漿を100例以上収集でき、その解析を行っている。発熱期の血漿の入手は難しく患者が受診するcritical期(4-6日)と回復期(7-10日)の2点で解析できた。これらを用いてGalectin9(Gal-9)とOsteopontin(OPN)を測定した。両者ともにCritical期に高く、しかし回復期に有意に減少した。これよりデングウイルスが起こす急性ウイルス感染症ではOPNとGal-9が共に炎症の変化に関わることを示した。急性期では、血漿OPN値が血小板数と逆相関し、Hctとは正相関があり、OPNのデング感染症での重症化と関連し、そのマーカであることが明らかになった。また、OPNはthrombinでcleaveされ、N-half OPNを生ずることが知られているので、N-half OPNも測定したところ、N-half OPNは急性期に正常群と比べて著減した。しかし、この低下したN-half OPNが回復期に上昇するが、上昇度がそれぞればらばらであった。現在、この上昇度が高いcaseの重症度など臨床データとの相関を解析している。一方、血漿Gal-9は今までの臨床検査データとの相関がみられないが、1997年の診断とは相関する:重症度の高いDHFはDFより高いGal-9を産生する方向がある。 In vitroの実験として培養細胞を用いてHIV感染に伴うGal-9,OPN産生能を検討するために23年度は、細胞株を用いたスクリーニング系を立ち上げるために、HIV感染をサポートするCD4陽性細胞8種におけるOPNの発現様式を基礎解析した。これらの細胞ではOPNプロモーター領域にOPN発現を抑制するような遺伝子変異は見当たらなかったが、おおむね発現は低下していた。また細胞によってsplice variantsの発現性が異なっていた。またsplice variantsを引き起こすようなintron置換がないことを明らかとした。これらの知見からOPNのbasal expressionのウイルス感染による誘導を検討することは有用である。また、T細胞白血病にはOPN-A variantが重要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
必要な抗体の調製と供給、患者血漿検体のGal-9のELISA測定をタイムリーに行った。またGal-9を産生・分泌する免疫細胞についての基礎研究より、病体解明の新たなサロゲートマーカー候補を見出した。来年度にむけ、基礎的データの回収(細胞腫による発現量の変化、genetic change)と解析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
症例数を増やして血中Gal-9、OPN測定を継続する。またGal-9産生免疫細胞の測定をフローサイトメトリー法で行い、症状・予後との関連を探る。これに必要なラベル化抗体を大量調製し、供給する。さらに確立したデングウイルス方法でデングウイルスのタイピングを行うとともに、OPN basal expressionからのHIV感染による影響をin vitroで検討し,splicing variantsごとのウイルス感染における作用を検討する。
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