研究課題/領域番号 |
23300002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩田 覚 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (00263161)
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研究分担者 |
高澤 兼二郎 京都大学, 数理解析研究所, 助教 (10583859)
谷川 眞一 京都大学, 数理解析研究所, 助教 (30623540)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 離散最適化 / 劣モジュラ関数 / 近似アルゴリズム / NP困難 / ネットワーク / 離散凸性 |
研究概要 |
劣モジュラ関数は,凸関数の離散版に当たり,様々な分野で現れるとともに,効率的に解くことのできる離散最適化問題に共通の構造として知られている.一方,実務上重要な多くの離散最適化問題は,NP困難であり,効率的な厳密解法は存在し得ないと予想されている.そのため,現実的な時間内で近似解を得る近似アルゴリズムの設計が研究されてきた.本研究の目的は,このような離散最適化の二つの大きな流れを融合することによって,汎用性の高い近似アルゴリズムを設計する新たな手法の確立にある.具体的には,相互に関連した以下の3テーマの研究を推進する.(1) 劣モジュラ関数最大化の近似アルゴリズムの実験的解析.(2) 劣モジュラ関数で記述される最適化問題に対する汎用近似アルゴリズムの設計.(3) ネットワーク上の最適化問題に対する近似アルゴリズムの設計. 計画2年度目に当たる本年度は,特に(2)と(3)に注力した. 特に,(2) に関しては,検索結果の表示に関連して注目を集めている順序付け問題に対する Azar, Gamzu, Yin (2009) の2近似アルゴリズムや計算機資源の効率的な配分に関連した最小和被覆問題に対する Feige, Lovasz, Tetali(2004)の4近似アルゴリズムに劣モジュラ最適化の文脈における解釈を与え,同じ近似比で,より一般的な状況設定に適用可能な近似アルゴリズムを設計した.この研究成果を2012年8月にボストンで開催された近似アルゴリズムに関するワークショップで発表した. また,単調とは限らない劣モジュラ関数の最大化問題に対して,イスラエルの研究者等が近似比 1/3 の決定性アルゴリズムと近似比 1/2 の確率的アルゴリズムを提案した.この手法を詳細に解析して,双劣モジュラ関数最大化に対する近似アルゴリズムに自然に拡張されることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順序付けに関する近似アルゴリズムの設計は,当初の計画通りの成果が得られ,共著論文が国際会議に採択された.劣モジュラ関数ライブラリーの作成も当初の予定より,やや遅れ気味ではあるが,海外の研究者と連絡を取りつつ,概ね順調に進んでいる.さらに,当初の計画にあったように,2012年10月に京都大学で,離散凸性と最適化をテーマとした国際研究集会を開催し,本研究課題を推進すると同時に,世界的にも研究の活性化に貢献できたと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
劣モジュラ関数ライブラリーの作成に向けて,基本的な関数の実装を進めるとともに,機械学習の分野において劣モジュラ最適化の応用に取り組んでいる欧米の研究者を招聘し,応用の観点から見て代表的な劣モジュラ関数をベンチマークに加える.
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