研究課題/領域番号 |
23300020
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
米田 友洋 国立情報学研究所, アーキテクチャ研究系, 教授 (30182851)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 非同期式回路 / 束データ方式 / マッチドディレイの最適化 / レイアウトの最適化 / パス遅延情報 / レイアウトのグルーピング |
研究概要 |
これまでの非同期式回路の設計は,非同期式回路設計の熟練者がその知識と経験を駆使して手作業で作り上げたものであり,一般の設計者にとっては難しいものであった.本研究では,一般の設計者が,非同期式設計に親しみ,容易に高い性能を持つ非同期式回路を設計し,動作を確認することができるような枠組みを構築することを目的としている.本年度は,レイアウトの最適化に注力し,指定した回路部分をそれぞれ指定した領域に配置するCADスクリプトをCadence Encounter上に本格的に実装し,非同期式ルータを用いて詳細な評価を行った.非同期式回路の配置配線においては,CADがグローバルクロックを認識できないため,データレジスタ等のビットごとのFF(フリップフロップ)が分散されて配置されてしまう可能性がある.昨年度は,そのような場合にも適切なマッチドディレイ値を求める手法を開発したが,正しい動作を保証できるものの,最も遠いFFに合わせた遅延を求めるため,動作速度が低下する場合がある.そこで,そのような一連のFFを小さな領域に閉じ込めてやれば性能向上が見込めるわけであるが,ユーザが人手で領域とそこに入るべきFFを指定するのは大変手間がかかった.本研究では,論理合成前のRTL記述に,ディレクティブを用いてまとめるべきFFと入るべき領域を指定し,その情報をEncounterが認識できるようなツールパスを構築した.非同期ルータの実回路において,領域指定を行わないもの,および領域指定の細かさを3レベル変化させたものを用いて詳細に評価を行ったところ,領域指定を行うことで数%の性能向上が得られた.特に,遅延変動を想定してある程度のマージンを考慮する必要があるが,大きな遅延変動を想定した場合には,領域指定を最も細かく指定したものは,領域指定を行わないものより約14%の性能向上が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はレイアウトの最適化に注力したが,非同期式回路において,必要なFF等をまとめて小さな領域に閉じ込めることを手軽に行えるような手法を実現し,実回路である非同期式ルータに対して適用し,性能向上のデータを取るところまでを行うことができた.このことから,おおむね順調と考えることができる.
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今後の研究の推進方策 |
さらなる最適化のためには,回路の仕様から,最適化のための各種情報を抽出することが有効であると考えているが,その仕様がある程度フォーマルな形で残されていないことが多い.このため,回路からまず仕様の原型のようなものを引き出し,それを元に,人手ではあるが,ある程度容易にフォーマルな仕様を再構築できる環境を実現できると,本研究には有効であると思われる.今後,このような方向性も考えてみたい.
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