研究課題/領域番号 |
23300051
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
篠原 歩 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (00226151)
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研究分担者 |
成澤 和志 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (40583323)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 機械学習 / 人工知能 / データ圧縮 / 知識発見 / アルゴリズム |
研究概要 |
文字列の多重集合であるマルチトラック文字列を対象として,トラック間の置換を許した順列パターン照合問題について,近似を許した照合を効率よく行うためのデータ構造を定義し,その効果を実証する実験を行った. また文字列の基本的な繰り返し構造に関して,左右に延長不可能な極大の繰り返し構造である「連」についての研究をさらに押し進め,連を多く含む文字列を生成する準同型写像の探索を行った.その結果,連の個数に関しては,これまでに知られている最良の下界と厳密に一致する下界を与える文字列を生成する,より簡潔な準同型写像を見つけ出すことができた.さらに,連の指数和の最大数については,既知のものよりも真によい下界を与える準同型写像を見つけ出すことができた. また,接尾辞集合に対する決定性有限オートマトン(DFA)の最小無矛盾問題の計算量を解析した.DFA の最小無矛盾問題は,入力例に矛盾しない状態数最小のDFA を見つける問題であり,計算学習理論において学習可能性と深く関連している.既存研究において,一般の入力に対する困難性は知られていたが,本研究では,対象を接頭辞集合,すなわち入力のすべての文字列がある文字列の接尾辞になっている場合に限定したとしてもやはりNP困難であり,また近似精度を保証した多項式時間アルゴリズムを構築することも難しいことを証明した.さらに,強化学習の枠組みにおいて,ある学習領域で得られた知見を類似した他の学習領域に適用する転移学習に関して,サンプル量の削減が原理的に可能であることを証明し,またそれを裏付ける実験結果を得た. ゲームAIに関しては,2人型の完全情報ゲームである三並べを拡張した一般化三並べにおいて,一手における石の数を増やしたときのゲームの勝敗を解析する一連の結果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,知識発見の原理の究明と実働化を目指して,特にデータ圧縮の技術との関連に着目しながら理論と応用の両面から研究を展開していくものである.理論面では,上述の通り,データ圧縮の重要な要素となる繰り返し構造について,最も基本的な文字列としての性質に関する連の最大数と指数和に関する進展があった.また機械学習の理論において重要な最小無矛盾問題やサンプル量の解析に関する進展があった. 一方,応用面に関しては,申請書に記載しているとおり,ゲームAIやロボット制御に関する実問題への取り組みにも力をいれている.ETロボコンにおいて,東北地区大会,そしてチャンピオンシップ大会それぞれにおいて優秀な成績を残すことができた. 以上のことから,おおむね順調に進展していると自己評価している.
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に研究が進展してきたので,それぞれの項目について当初の計画に沿って研究を進めながら,最終年度としての総括を行う予定である. まず,マルチトラック文字列の照合問題に関して,近似を許した照合が可能になったので,これを実データに関して適用することで,その有用性を実証していく予定である. 一方,文字列の繰り返し構造である連について,これまで主に下界を更新することに注力してきたが,その中で得られた知見をもとに,上界の証明にも取り組む.そのためには組み合わせ論を駆使した数学的な議論と,それを補佐する大規模な計算機実験が必要であるので,それぞれに精力的に取り組む.またその際,文字列の両端が繋がった円環文字列を題材とした連を考慮することで,左端・右端の「例外処理」を考慮する必要がなくなるため,より見通しのよい議論ができるものと見込んでいる. また,機械学習に関しては,質問による厳密学習の枠組みを見直して,あらたな概念クラスについての学習可能性と不可能性の境目の解明を目指す.特に,ブール関数の学習可能性について,既存の結果を整理しながら,新たな進展を目指す. 応用面に関しても,今年度までと同様に,それぞれの具体的な問題に対して取り組み,そこで得られる知見を理論解析にフィードバックさせることで相補的なさらなる進展を目指す.
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