まず,機械学習に関して,正の例と負の例の個数の割合が著しく異なるクラス不均衡データからの学習に対して,効率のよい学習アルゴリズムを提案した.これは,経験的カーネル平均を用いるもので,既存方法に比べて精度を同程度に保ちながらより高速に処理できる方法である. また,文字列の多重集合であるマルチトラック文字列を対象として,トラック間の置換を許した順列パターン照合を高速に行うための索引構造として,縮約マルチトラックポジションヒープを提案した.これは長さnの時系列データN本からなるマルチトラックに対してO(n)領域に収まるデータ構造であり,O(nN)領域を必要としていた既存のマルチトラック接尾辞木やマルチトラックポジションヒープと比較して,はるかに省メモリである.このデータ構造について理論解析とともに,実データに対する実験を行い,その効果を検証した. さらに,時系列データに対する近似照合の観点から,順序保存照合に取り組んだ.順序保存照合は,数値そのものではなく,前後との順序関係にのみ着目するものであり,ノイズによるデータの揺らぎやシフトに対して頑健な照合が行えるものとして注目されている.この課題に対し,まず順序保存nグラムをオンラインで計算するアルゴリズムを開発した.与えられた時系列データに対するすべてのnグラムを計算するために,既存方式では特殊なデータ構造や整列アルゴリズムが必要なためオフラインでしか計算ができなかった.我々は,これをオンラインで計算できる符号化法とアルゴリズムを開発した.さらに,順序保存照合に適したフィルタを提案し,これをSIMD演算を用いて実装することで,実データに対して高速に順序保存照合が行えることを確かめた. 一方,ゲームAIに関して,2プレイヤの完全情報ゲームである三並べを拡張した一般化三並べにおいて,盤面をトーラス状にしたときのゲームの勝敗を解析した.
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