研究概要 |
着手とプレイヤ心理の関係について,試合中の局面評価値の推移に着目し,ゲーム進行のパターンが三つの基本パターンに分類できることを示した。ある種の試合進行パターンのとき場の緊張感が高まるというように,ゲーム進行パターンがプレイヤの感情に影響を与えることを考察した。本研究で開発するゲームソフトが状況に応じて,ある種の試合進行パターンへと誘導することで,例えば,遊戯性が高まるように制御できる可能性を検討した。 ゲーム場における知と知の相互作用をゲーム情報力学モデルとして提案した。本モデルは情報粒子の流れを仮定し,流体力学を援用することで定式化した。実データとして,コンピュータによる局面評価値とトップレベルの人間による評価値を収集し,提案モデルに適合するかどうかを評価した。 教えるスキルの定量的指標の確立を目指すべく,将棋およびオセロを題材として,あたかも人間上級者のように,下位の相手の強さや優劣の状況等に応じて,自分の強さを自然な形で調整できるソフトを開発した。そして,実験ソフトと対戦してみてどのように感じたかを何人かの被験者にアンケート調査し評価分析した。人間らしさの特徴として,指し手の推移確率に着目することで,最善手の評価値との距離を考慮しながら,パフォーマンスの強弱を適宜切り替えることのできるシステム暫定版を開発した。教育的な観点から,下位者が関心を高められる試合展開について考察を深め,本研究で開発する人間らしいふるまいを目指すゲームシステムに反映させる試みを検討した。まだ暫定版であるが,方向性として良い感触を得た。今後,教えるスキルを定量的に評価する指標候補を策定し,強いという観点での名人と比較されうるような,教えるという観点での名人の定義付けと実装を試みる上での礎を準備した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究分担者らとの協働作業が予想以上に順調に進展している。定期的に研究の打ち合わせをし,進捗の確認や次回までの課題などを整理して当該研究を実施している。研究進捗においては,現在までの成果とその分析に焦点を当てている。分担者らの指導する学生が当該研究テーマに興味を持ち,システム(将棋ソフト,囲碁ソフトなど)の実装手伝いにおいて高い能力を示してくれたことが当初の計画以上に進展している主な理由である。
|
今後の研究の推進方策 |
プレイヤの心理とゲームでの着手選択の関係に関して,情報力学モデルと関連しつつ,光トポグラフィなどの計測器により実データを解析する研究を推進する。ゲーム場における知と知の相互作用に関して,流体力学に基づく情報力学モデルの援用をさらに工夫し,知的な相互作用の結果としての遊戯性の発揚を力学的に説明できるように進展する。教えるスキルの定量的指標に関して,脳活動計測による評価からフィードバックを得る方向で進めたい。
|