研究課題/領域番号 |
23300056
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
飯田 弘之 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (80281723)
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研究分担者 |
SPOERER Kristian 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 特任助教 (20598461)
鶴岡 慶雅 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50566362)
池田 心 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (80362416)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ゲーム情報学 / ゲーム情報力学 / 合意形成 / 序盤データベース / コンピュータチェス |
研究概要 |
ゲームを題材として,人間らしいふるまいの原理を解明するにあたり,創造性または独創性が求められる序盤に焦点を当てていくつかの実験を行い,新たな知見を得た。通常,序盤では定跡と呼ばれるデータベースが利用され,あたかも名人同士がプレイしているかのような試合展開となる。しかし,上位者が下位者と対戦するとき,定跡を踏襲することが得策でないことを経験的に知られている。本研究では,この経験則を解明するための実験を設計し,定跡にしたがうことの利点および欠点を評価にした。それによって,どのようなケースに定跡を用いるべきであるかを導出した。また,定跡データベースを構築する上での有益な知見を得るに至った。さらに,定跡がどのような理由および背景で利用されるようになったかを考察した。この結果は,ゲーム分野に限定されず,教育など,他の分野にも応用可能性があることを示唆した。 合意形成は人間らしさが如実に表れる現象である。本研究では,コンピュータチェスを題材として,複数エージェントによる合意形成(多数決)について,たくさんの実験を行い,多数決による利得とその条件について調査した。本テーマは,社会科学的な観点からも注目すべきものであり,今後の新たな展開が期待されるものである。最初は,三個の異なるプレイヤを準備し,多数決による合議について詳細を分析した。リーダープレイヤの候補手が多数決により否定される場合に注目し,その理由について新たな知見を得た。また,数理モデルを構築し,実験の結果を説明することに成功した。さらに,同一エージェントによる合意形成についても数々の実験を行い,どのような利点と欠点があるかを調査した。 本研究プロジェクトで考案したゲーム情報力学の応用として,プレイヤを動機づけする面白さ・遊戯性・緊張感といった概念を物理的に表現し,ゲーム情報学の従来研究を発展された新たなかたちを模索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究分担者らとの協働作業が予想以上に順調に進展している。定期的に研究の打ち合わせをし,進捗の確認や次回までの課題などを整理して当該研究を実施している。研究進捗においては,現在までの成果とその分析に焦点を当てている。分担者らの指導する学生が当該研究テーマに興味を持ち,システム(チェスソフトおよび合意形成システム,将棋ソフト,囲碁ソフトなど)の実装手伝いにおいて高い能力を示してくれたことが当初の計画以上に進展している主な理由である。
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今後の研究の推進方策 |
合意形成に関する研究は発展途上であり,今後より詳細を明らかにしなければならない。特に,エージェント数がコミュニティレベルになった時にどのようなふるまいが期待できるかを考察するための実験装置を構築できるかどうか挑戦したい。 ゲーム性を高める技術の理解と向上が当該分野で頻繁に議論されている。本研究プロジェクトではゲーム性の定量的議論を可能にするゲーム情報力学モデルを考案した。このモデルを用いて,シリアスゲームとして分類される教育分野との学際的研究を推進したい。 プレイヤの情動とゲームでの着手選択の関係に関して,情報力学モデルと関連しつつ,光トポグラフィなどの計測器により実データを解析する研究をさらに推進したい。ゲーム場における知と知の相互作用に関して,流体力学に基づく情報力学モデルの援用をさらに工夫し,知的な相互作用の結果としての遊戯性の発揚を力学的に説明できるように進展する。教えるスキルの定量的指標に関して,脳活動計測による評価からフィードバックを得る方向で進めたい。 予算執行の工夫により,一部を節約することができた。
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