研究課題/領域番号 |
23300068
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
三林 浩二 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (40307236)
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研究分担者 |
工藤 寛之 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (70329118)
荒川 貴博 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (50409637)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | UV-LED / 匂い / 高感度 / 選択性 |
研究概要 |
本課題の目的は、匂い情報つまり揮発性化学情報について、匂い成分の認識素子として生体触媒である酵素群を用い、その電子受容体の蛍光特性の変化を調べ、高感度に匂い成分を計測可能なセンサシステムを構築することである。24年度には、初年度の光学系の最適化による高感度な蛍光検出系にて、匂い成分の高感度計測を進めた。 光学系の高度化において、生体触媒での反応部を最適化では酵素触媒を光ファイバ端面に装着する固定化法の検討が不可欠であった。既存の酵素固定化材である光架橋性樹脂は材料自身の自家蛍光がノイズを発生することから、包括固定化用の高分子材料PMEHを独自に合成した。PMEHは生体適合性材料MPCの一種で、細胞膜と同様なリン脂質基を有し、親水基と疎水基を有する両親媒性の高分子材料で、光学特性にも優れている。そこでMPCモノマーをベースにEHMAモノマーを加えて、ラジカル重合を行い、透析分離と乾燥工程を経てポリマーを合成した。このPMEHで酵素触媒をH-PTFE膜に包括固定化し、その酵素膜を光ファイバの感応部に装着して、蛍光計測プローブとしたところ、自家蛍光に伴うノイズが観察されず、良好なNADH計測及びガス計測が可能となった。 また初年度に励起光源系の設計として、バンドパスフィルター、多連装式のUV-LED光源系、7軸光ファイバにより構成したシステムを導入したが、感応部に匂い成分やその代謝産物が蓄積して、光学出力値の初期値へのシグナル復帰機能が得られなかった。そこで嗅覚の粘膜層に相当する自作の洗浄システムを光ファイバ先端に取り付け、酵素反応に不可欠な酸化型NAD溶液の循環システムを組み込んだ。これにより酸化型NADを常時供給しながら、匂い成分の連続的な計測が可能となり、ホルムアルデヒドガスなどのガス成分を嗅覚閾値以上の感度で連続モニタリングすることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光学系を改良し、自家蛍光の少ない酵素固定化用高分子材料を合成し、ガス成分の蛍光計測に利用したことで、ノイズの少ない蛍光計測が可能となった。加えて、自作の洗浄システムを光ファイバ先端に取り付けることで、匂い成分の連続的な計測が可能とし、概ね計画通りの成果を達成している。また得られた研究成果を学術論文1報(Sensors and Actuators B-Chemical, 161(2012)486-492)と招待講演1件(E-MRS 2012 SPRING MEETING, Strasbourg, France, 2012/5/14-18)、一般講演1件(第二回次世代センサ研究発表会、東京、2012/10/10-12)にて発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
25年度には、構築した高感度な蛍光式匂いセンサシステムについて、低濃度の複合標準ガス発生装置を用いて、低濃度レベルでの連続計測特性を調べ、新規な人工嗅覚へと発展させる。また高感度な匂いセンサの開発において、単成分の出力比較だけではなく、多様な匂い成分が混じりあった複合臭気でのセンサ特性(選択性)評価が極めて重要である。そこで複合標準ガス発生装置を用いて計画通り、開発した高感度匂いセンサの特性評価(検出下限界、選択性、連続計測能)を行う。また研究成果を国内外の学術会議や学術雑誌にて発表する。
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