研究概要 |
ロボットのための社会的な知能を開発し評価するには,社会的なインタラクション経験に基づく分析・学習・実装が必要となるため,実際のロボットを用いた実験だけでなく,仮想環境での効率的な実験が重要である.社会的・身体的な知能を議論するために必要となる基本的なシミュレータの機能は,力学計算に基づく身体性の考慮,視聴触力覚シミュレーション,対話シミュレーションの3点を融合する事であるが,単に身体性を持つ社会エージェントを構築するだけでなく,ユーザが仮想空間内のアバターを操作する事のできるインタフェースを用いて,協調作業における人間機械協調系の評価を行う事のできるシステムを構築した.具体的には,身体的な動作に伴うインタラクションを実現可能とするため,Kinectと呼ばれるゲーム用簡易動作計測デバイスとのインタフェースシステムを構築し,身体運動情報のリアルタイム計測・制御を実現した.さらに,ヘッドマウンドディスプレイによるAugmented Reality環境を構築し,仮想空間の中であたかもロボットと面しているかのような体験ができる環境を整備した。 一方で,具体的な社会的知能の枠組みの検証を行うための状況として,道具の使い方を学習するロボットと教師である人間がインタラクションをする場面をターゲットとした課題を設定した.社会的経験からの学習の対象は,道具の動きと道具によって動かされる物体の動きの関係性であり,これを統計的情報処理によって学習する基本的な枠組みを確立した.これにより,未知の道具を用いる場合でも,既知の道具に用いられていた類似した形状部分の知識を手がかりにして,適切に道具の動かし方を推定することが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度では,基盤となるシミュレータのプロトタイプシステムを拡張し,人間の視線の制御や,身体的な動作に伴うインタラクションを実現可能なシステムを構築することが目的であった.実際に,Kinect デバイスによる身体運動情報のリアルタイム計測・制御の実現,ヘッドマウンドディスプレイによるAugmented Reahty環境の構築など,今後の研究に必要なインタフェースを構築し,実用可能性を確認している.
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今後の研究の推進方策 |
具体的な社会的知能の検証の状況として,(1)人間とロボットが協調して組み立て作業を行う工場での現場,(2)道具の使い方を学習するロボットに対するインタラクティブな教示,という二つの状況をターゲットとして研究を推進する,シミュレータ上のロボットと複数のユーザとの間のインタラクションを,全身動作計測装置とヘッドマウントディスプレイを通じて実現し,仮想環境で行われたインタラクションの結果から,ロボットの自律行動,および対話的行動の枠組みを評価する方法論を確立する.
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