研究課題/領域番号 |
23300082
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
尾崎 繁 筑波大学, 医学医療系, 講師 (60292546)
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研究分担者 |
山本 三幸 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80143147)
岩本 義輝 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50184908)
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キーワード | 感性情報学 / 意思決定 / 判断 / 脳波 / 事象関連電位 / 動物モデル |
研究概要 |
人の意思決定プロセスの理解は、報酬系・情動系の脳内機構の解明だけでなく、その成果を感性工学的、神経経済学的な応用へ繋げる意義を有する。本年度は感性情報に基づいた意思決定プロセスを客観的に評価する実験パラダイムと解析方法の開発を目指し、人、および人と類似の特質を示す霊長類動物モデルを用いた研究を並行して実施した。 人を対象とする実験:様々な感覚入力に対する脳内情報処理を反映する事象関連電位に着目し、意思決定の基となる「判断」に関わる神経ネットワークを精査するための実験システムの開発に着手した。研究分担者(山本)はfMRIを用い、「数の大小の判断」に関わる脳活動を明らかにした(Ogata et al.,'11)。この過程で数字ペア刺激画像の提示間隔(1~10秒)を変えると大小判断の応答時間が変わることを見出したので、行動心理実験を行った。その結果、刺激画像の提示間隔が一定の時は間隔が長いほど応答時間が延長すること、ランダム提示間隔の時は間隔に反比例して応答時間が短縮することがわかった。さらに、行動心理実験中の被験者から脳波を記録し、種々の刺激画像を様々な時間間隔で提示した時に、それぞれの判断応答に対応した事象関連電位を記録解析するシステムを構築した。 動物を対象とする実験:意思決定の感性情報処理に関わる神経基盤の解明を目指し、小型霊長類コモンマーモセットを用いた報酬行動課題の開発に着手した。視覚刺激を提示し、応答を入力するタッチパネルモニタ、応答に対して報酬を与える装置、これらを制御するコンピュータとソフトウエアからなるシステムを製作した。次に、刺激提示とその行動選択応答(報酬装置作動)のタイミング、行動観察用ビデオカメラを連動させた記録解析システムを構築した。また、課題の遂行に適した報酬を選択するために、ジュースに対する動物の嗜好性を調べ、報酬候補を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、研究課題の遂行に必要な人と動物の実験システムの開発に注力した。それぞれのシステム開発はおおむね順調に進展した。実験システムの動作確認は完了し、予備実験の段階に到達した。今後は、個々の改良を加えながら、実験システムとしての精度を高めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
現段階で本研究の推進に支障を来す問題点は見出せない。 人を対象とする実験では、これまでの研究成果を発展させ、刺激画像に対する選択課題における事象関連電位の記録と解析を推進する。予備実験では、被験者に同様の選択行動を教示しても、刺激画像を数字、線分、花の写真等に変えると事象関連電位波形が異なることが示唆されたので、詳細な解析を進める。 マーモセットを対象とする実験では、初年度に開発した報酬行動課題のシステムに改良を加えながら、動物の課題トレーニングを実施する。生体電気活動ワイヤレスモニタリングシステムの実験準備を進める。
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